「ワシントンに正義が戻った」――。先月末から、米国の首都ワシントンでこんな話が盛り上がっている。話題の主は、姿を消していた米国の国鳥ハクトウワシのオス「ジャスティス(正義)」。14年間この地で暮らし、環境団体が巣の様子をライブカメラで世界に配信していたが、2月上旬、突然いなくなり、心配する声が殺到していた。
このハクトウワシは、つがいで2005年、ワシントン南西部にある木に巣をつくった。環境団体「地球保護団」が観察を続け、米国で愛国心を表すことば「忠誠の誓い」から、オスはジャスティス、メスは「リバティー(自由)」と命名された。
70年代ごろから環境汚染が深刻化したワシントンでは、ハクトウワシも姿を消していた。90年代から繁殖活動が始まり、次第に数を増やしていたことから、2羽は「環境改善の象徴」ともされていた。
同団体が13年、巣の近くにライブカメラを置いてネット配信を始めると、米国内外で延べ数千人が視聴。2羽の様子を誰でも書き込める専用ページには、えさ取りや子育ての様子が連日つづられ、毎日数時間「観察」する人もいるという。ハクトウワシの寿命は30歳ほどとされ、2羽は25歳を超えているという。これまで夫婦仲良く暮らし、22羽が巣立った。
ところが、今年2月9日を最後にジャスティスがカメラの前から姿を消した。これまで1日以上巣をあけたことがなかったことから、「どうしたのか」「何があったの」と心配する声が、同団体に電話やメールで100件以上寄せられた。夫がいなくなり、落ち着きなく動き回るリバティーを心配する人もいた。
3週間近くたった先月27日正午過ぎ、ジャスティスが何の前触れもなく巣に現れた。専用ページでは「ジャスティスが戻った」と大騒ぎ。祝福のコメントが多数寄せられ、ワシントン・ポスト紙も「2羽がまた一緒に」との見出しで報じた。
同団体のトミー・ローレンスさん(26)は「他のオスとの争いで一時的に巣を離れていたのでは」と推測する。ローレンスさんは、「政治の町、ワシントンで『正義』が戻ってよかった」と話した。(ワシントン=染田屋竜太)