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ホロコーストというトラウマ 仏現代美術の巨匠の原点

作者:佚名  来源:本站原创   更新:2019-3-8 14:42:23  点击:  切换到繁體中文

 

生と死、存在と不在、記憶、歴史――。フランスの現代作家クリスチャン・ボルタンスキーは、人間の根源的なテーマに向き合い、インスタレーションや映像作品を発表してきた。その初期作から最新作までを集めた日本初の大規模回顧展が、大阪・中之島の国立国際美術館で開かれている。


「これは回顧展であり、回顧展ではない」と、ボルタンスキーは言う。会場には、1960年代後半から2018年までの代表作が並ぶが、作品は互いに重なり、響き合い、会場全体が一つのインスタレーションのように構成されている。3Dの設計図を作り、作家自ら展示構成を練った。さまざまな音、光、匂いに包まれた薄暗い会場を歩くと、作品の内部に取り込まれたような感覚になる。


1944年、パリに生まれた。60年代後半から短編フィルムを制作し始め、70年代以降、写真や古着といった身近な素材を使いつつ、歴史や記憶と向き合った作品を発表してきた。国内では「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」にも参加している。


「全てのアーティストの作品の原点には、トラウマがある。私の場合は、ナチスによる大量虐殺だった」。父はユダヤ人で、戦中、床下に隠れて1年半を過ごした。また、幼いころには、両親の友人たちから強制収容所での悲惨な体験を聞いた。作品に用いられる大量の古着や肖像写真は、無数の人々の存在と不在とを想起させる。


一方、近年の作品は、より個々人の死を想起させる傾向が強い。それは、自身が年を取るにつれ、死を身近に感じるようになったからだという。「黄昏(たそがれ)」は、たくさんの電球が床に置かれた作品だが、会期中毎日二つずつ明かりが消え、最後は真っ暗になる。作家を含め、全ての人生が死へと向かっていることを意識させる。また「黒いモニュメント、来世」では、墓石のような黒い立方体が林立する先に、「来世」の文字が浮かび上がる。


「私の作品は、どんどん非物質的になっている。作品を残すことよりも、神話や伝説を作り出すことに興味がある」


「アニミタス(チリ)」は、チリのアタカマ砂漠で数百の風鈴が音を奏でる映像だが、実物はおそらく、朽ちて残っていないという。「ミステリオス」は、パタゴニアに伝わる「クジラは世界の起源を知る存在」という言い伝えをもとに、クジラとの対話を試みた映像作品だ。


「私が望むのは、私が死んで名前が忘れ去られた後、作品の記憶が神話のように語り継がれること。パタゴニアでは『クジラに話しかけた変な男がいた』という伝説が残るでしょう」


ふらりと教会に立ち寄ってベンチでたたずむ時のように、自身の展覧会が「考察の場」であってほしいと言う。「作品を見るのではなく、作品の中にひたってほしい。全てを理解する必要はない。何かが起きているということを感じてほしい」


「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime」は5月6日まで。4月29日、5月6日を除く月曜休館。一般900円。国立国際美術館(06・6447・4680)。(松本紗知)



 

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