岡山県鏡野町の山奥に人気のラーメン店がある。看板メニューは町の特産品のフルーツトマトがのった「鏡野ラーメン」。冬季休業中だった店は16日から今年の営業を再開し、地元の人たちでにぎわった。
日陰にまだ雪が残る同町北部の上斎原地区。鳥取県境まで5分ほどの山あいの道路脇に立つ住宅に、ラーメン店が併設されている。
春から秋にかけて週末限定で開く「お茶屋のラーメン店」だ。今年の営業が始まった16日午前11時、出前の注文が次々と入り、店に客が集まり始めた。
店主の片田秀二さん(69)は同地区出身。津山市で建築関係の仕事をした後、野草のお茶を製造販売する会社「片田エージェンシー」を1987年に創業した。同地区では野生の熊笹(くまざさ)の葉をあぶってお茶にして飲む習慣があった。片田さんは同地区の自宅に加工場を設け、熊笹のお茶を商品化。これがヒットし、会社は軌道に乗った。
片田さんは「1カ月毎日ラーメンを食べていたこともあった」というほどのラーメン好き。好きが高じ、約20年前、加工場に厨房(ちゅうぼう)を設けて「お茶屋のラーメン店」を開いた。妻の千津恵さん(64)は「ラーメン好きは知っていたが、まさかお店をやるとは。でも2人で新しいことを始めるのは楽しかった」と振り返る。
飲食店で働いた経験はなく、ラーメン店を食べ歩いた経験をもとに食材や麺、スープを試行錯誤した。開店後2カ月はほとんどお客さんは来なかったが、周辺にラーメン店はなく、物珍しさも手伝って地元客が集まるようになった。
約10年前、知人にもらった地元産のフルーツトマトを食べて驚いた。「こんなにおいしいトマトがあるのか」。さっぱりしたトマトに合うスープを考案、「鏡野ラーメン」と名付けた。
「鏡野ラーメン」は看板メニューとなり、店もインターネットなどで話題となった。町の観光パンフレットでも紹介され、昼時には店の外まで行列ができる人気店に。「寒い中、外で待ってもらうのは申し訳ない」と店を増築して22席に増やした。ピーク時は夫婦だけでは切り盛りできず、地元の人や常連客が食器の片付けを手伝っている。
16日、記者も「鏡野ラーメン…