玄界灘に巨大なシャチ!?――。佐賀県唐津市呼子町の港を拠点とする遊漁船の船長が長崎沖で、船に寄り添って泳いだり、何度もジャンプしたりする姿を動画におさめた。専門家によると、玄界灘でシャチが目撃されるのは珍しいという。
長崎県の対馬と壱岐の間にある好漁場・七里ケ曽根付近。2月14日午前10時半ごろ、サンライズの遊漁船「新海」の田代誠一郎船長(39)が釣り客の様子をうかがっていたとき、数十メートル先で何かがはねた。
「まさかシャチ!?」。半信半疑で海を見つめると、再びはねた。白と黒の体。間違いない、シャチだ。
釣り客5人に仕掛けをあげてもらい、船を近づけた。「すげぇヒレ」「でけぇなぁ、生のシャチは見ないよね、なかなか」。その迫力にみんな、興奮した。
少し離れたところに巨大な3頭が見えた。7メートルある自分の船の甲板より大きく感じた。その手前で、小さめの2頭が泳いでいたので船を近づけた。すると1頭が寄ってきてジャンプ。さらに船の横まで来て波しぶきと戯れるように泳いで前方へ。ジャンプを繰り返した。6キロほど一緒に進み、その後は釣りに戻った。
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田代船長は2007年から呼子港から遊漁船を出している。明るい人柄と釣らせる確かな腕にひかれ、国内外から多くのファンが訪れる。「最も予約がとれにくい船」と言われるほど絶大な人気がある。
その田代船長にとっても、シャチを見たのは3回目という。最初は07年6月で、オスとメスがゆっくりと泳いでいるのを見た。2回目はその翌年の6月で、メス2匹と子ども2匹が一緒にいるのを一瞬だけ見かけた。
田代船長は今回は「シャチが触れるぐらいの距離まで近寄ってきた。すごかったですね」と言う。並走を楽しみながら動画におさめたのは初めてのことで「感動のひとときでした」。
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マリンワールド海の中道(福岡市)の担当者は「シャチは基本的には寒い海にいて、時に温かい海に来ることがある。日本では北海道付近にいて、和歌山の海で目撃情報があるが、玄界灘では珍しい」と話した。(祝迫勝之)