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剝製(はくせい)や骨格標本500点以上に最新映像を交え、哺乳類が生き残るために獲得した能力と姿形を紹介する「大哺乳類展2」が、21日から東京・上野の国立科学博物館(科博)で開かれる。好評を博した9年前の展覧会からさらにスケールアップ。中でも剝製など約200種で構成する「哺乳類大行進」は迫力満点だ。
マッコウクジラの全身骨格がやってきた 大哺乳類展2
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長さ16メートルのマッコウクジラの実物大標本
会場中央約30メートルにわたって続く「大行進」は、原始的な哺乳類カモノハシやハリモグラから始まる。長い舌を伸ばしたオオアリクイ、翼を広げたインドオオコウモリなど珍しい剝製がいっぱいだ。
目線を上げると、天井からつりさげられた長さ16メートルものマッコウクジラが目に飛び込んでくる。右半身の皮膚や内部構造を再現した模型と、全身骨格を合体させた珍しい実物大標本だ。その下、一段高くなった台からはトナカイやオリックスなど約40種が見下ろす。
実はクジラやトナカイたちは、近年のDNA分析により、進化の系統的に近いことが分かっている。現在「鯨(げい)偶蹄目(ぐうていもく)」と呼ばれる仲間たち。カバ科、キリン科、ウシ科、マイルカ科など実に多種多様な生き物を含む哺乳類界の一大勢力だ。
「大行進」は「齧歯(げっし)目」「霊長目」といった分類ごとに剝製たちが並ぶ。同じ「目(もく)」でもまったく異なる特徴を持つもの、別の「目」でも生活環境が似ていたために、姿形に似た特徴を持つものなど、進化の不思議さが見てとれる。
グラフィック・鈴木愛未
「大行進」には科博のお隣、上野動物園で死んだ動物たちの剝製も並ぶ。有名なものではパンダのリンリン(2008年に死亡)。なぜ剝製を作るのか。上野動物園の教育普及課・井内岳志さんに話を聞いた。
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上野動物園の動物は死後、多くが科博に引き取られます。亡くなるとすぐに園の獣医師が解剖して死因を調べ、他の個体にうつる感染症はないか、治療は適切だったかなどを調べます。その後、内臓のサンプルは共同研究している大学などに送り、骨と皮を科博に渡します。
皮に綿などを詰めて剝製にするだけでなく、骨格を分析して手や脚の動きの仕組みを調べたり、DNAを取り出したりということも。生きている状態では難しくても、標本なら調べられることもあります。
飼育されている動物には希少種も含まれます。標本として残すことで、その種のことをより深く研究できます。それが将来的に種全体の保護やよりよい飼育にも役立つ。亡くなった動物が後進のために「第二の人生」を歩むとも言えるでしょう。(鈴村綾子)
展覧会イメージビジュアル(実際の展示とは異なります)