インドは世界トップの製作本数と観客動員数を誇る映画大国だ。作品群はカレーの種々のスパイスのように、1本の作品にアクションやコメディー、ロマンスなどが混じり合った「マサラ映画」とも形容されてきた。ところが、突然歌が始まってみんなで踊り出す、そんなおなじみのシーンが減っているという。(ムンバイ=奈良部健)
インド映画、観客一体の「絶叫上映」 声援送り大騒ぎ
「ダンスシーンが減って仕事もなくなった」。「ボリウッド」の中心地ムンバイ出身のプラカーシュさん(39)は17歳でダンスを始め、2000年に映画のダンサーになった。日給はおよそ4千ルピー(約7120円)。海外ロケにも参加し、きらびやかな世界にいる自分が誇らしかった。
しかし、1カ月のうち25日、撮影で踊っていたのが、2年ほど前からわずか4日に減った。家族を養うためダンス教室を始めた。タクシー運転手や配達員に転職した仲間もいる。
「お金がもらえないと泣きついてくるダンサーが増えた」。ムンバイでボリウッドダンサー約900人を組織する労働組合のザヒッド・シェーク会長(48)はそう語る。外国人ダンサーの採用も増え、環境は厳しくなっている。
ボリウッド映画は話の筋と関係なく登場人物が集団で歌ったり踊ったりするシーンが頻繁に出てくる。物語自体は単純で勧善懲悪、ハッピーエンドが多い。
インド最大の娯楽とも言われる…