作家のモブ・ノリオさん寄稿
「最初はオレ、『天皇陛下と対談させろ』って言ってたんだよ」――昭和の末に連載された、男性向け週刊誌「平凡パンチ」誌上での異色対談「ロックン・トーク」を振り返っての内田裕也の言葉だ。無論、天皇との対談は実現しなかったが、一体、天皇に何を尋ねたかったのか? 今となっては、突飛(とっぴ)だが大真面目な彼の着想を笑うだけで済ませて、何を話したかったのかを聞かなかったのが悔やまれる。ほかにも、A級戦犯と目された競艇界の大物が毎夕のテレビCMで「一日一善」の標語と共に好々爺(こうこうや)ぶったイメージをお茶の間に刷り込んでいた時代に、「笹川良一さん ボートッて、そんなに儲(もう)かるの」などと自著に書き、独特のユーモアで時代のタブーを可視化させた、彼の政治的で倫理的で詩的でもある身体的知性とでも呼ぶべきセンス(彼のロックンロールの基盤的感性)と行動力(アクション)が、私は猛烈に好きだ。
内田裕也は、映画というメディアの中で特異な才能を爆発させたロックンローラーだ。彼を知りたければ、まず彼が企画・主演した映画『コミック雑誌なんかいらない!』『十階のモスキート』『水のないプール』等を観(み)ればいい。とりわけ『コミック雑誌なんかいらない!』は、DVDの特典映像で「オレがくたばったら棺桶(かんおけ)に入れて欲しい」と快活に語られる彼の魂の結晶であり、高度成長期以降の日本型テレビ社会(何もかもがワイドショー化される見世物(スペクタクル)社会)が続く限り永遠に古びぬ問題作だ。
この映画がなければ、日本のテ…