「ずーっと旅の中で生きてきました」。45周年記念の全国ツアーを6日に終えた=品田裕美撮影
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シンガー・ソングライターで小説家のさだまさしさん(66)。子どもの頃はクラシックの道を志し、デビュー後は「精霊流し」「関白宣言」「北の国から」などのヒット曲を次々に生み出しますが、最大の試練に直面して……。「失敗して負け続けた、へたれな人生」と、自らの半生を語った連載「語る 人生の贈りもの」(全15回)をまとめてお届けします。
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今までに何曲作ったか、ですか。正確にはわからないんです。アマチュア時代にライブで歌って、レコードになっていないものが結構ある。ソロになってからもそう。他の人のために作って、自分で録音していないものもある。600曲はないと思いますが。
バイオリンをやめ、吉田政美さんと出会い…ロシアや中国で諜報活動をしていた祖父のことから、借金返済中の気持ちまで、語り尽くします。
生みの苦しみはもちろんあります。自分を追い詰めないと曲を作れないので、締め切りは必須。狭いスタジオを借りて、パソコンと、ギターとか音が出るものをいくつか置いて、困ったときのために辞書をダーンと積んでね。1時間いくらのスタジオ作業だと「早く作らなきゃ」と思うでしょ。
切羽詰まって何が噴き出してくるか。網を投げて何がかかるかが楽しみ。いけすの中にいろいろ飼っていて、曲作りをするぞ、と釣り糸を垂らす感じです。
《45作目となる新アルバム「Reborn」収録の「パスワードシンドローム」(ナオト・インティライミと共作)は最先端のダンス音楽。ライブで観客は戸惑いつつ踊る》
どの楽曲も一生懸命作ってきたので愛着はある。でも、「○○が良かった」と振り返るところまで僕はまだ年老いていないのかもしれない。楽曲のクオリティーもこんなものじゃない。歌のパワーはもっとあるはず。もっといいものができると考えています。
10月25日に「グレープ」で…