東京・高円寺の銭湯「小杉湯」の番台で、イラストレーターの塩谷(えんや)歩波さん(28)が、訪ねた銭湯をイラストでまとめた「銭湯図解」を出版した。温かみのある絵に精巧な建築図法を組み合わせ、浴室内部を細かく描写している。塩谷さんは「お湯につかっているような、のんびりした気持ちで楽しんでほしい」と話す。
「ご飯がおいしくなる銭湯」「愛情につかる銭湯」……。銭湯図解には、そんな触れ込みとともに、東京都内を中心に24軒が紹介されている。斜め上の目線からのイラストには、湯船でゆったりしたり、体を洗ったりする人たちが柔らかなタッチで描かれ、銭湯愛がにじむ。
初心者、上級者、マニアック、人情味の四つに分類し、湯の種類や温度、備品などの情報も手書きで書き込んである。入浴した感想や銭湯の歴史などをまとめたエッセーも収録されている。
一つの絵を描くのに20時間以上かかった。レーザー測定器とメジャーを使い、洗い場の高さからタイル幅まで念入りに測定。50分の1~90分の1に縮尺して下書きしてペン入れし、水彩で色つけする。すべて手描きだ。
塩谷さんは早稲田大学大学院を修了後、都内の設計事務所に就職。だが、建築家にならないといけないという焦りやストレスから体調を崩し、1年半後の2016年夏に休職した。
そんなとき、友人や医師の勧めで行ったのが銭湯だった。「光が差した広い湯船につかると、視野が広がった気がした」。銭湯めぐりをするうちに、心身ともに回復。「体が入れ替わったように楽になった」と振り返る。
図解は、友人に銭湯の魅力を伝…