26日の第1試合で福知山成美(京都)と対戦した筑陽学園(福岡)。江口祐司監督(56)は保健体育の教諭で、ベンチ入りのほとんどの3年生の担任でもある。選手の素顔をつかみ、能力を引き出して初出場初勝利をつかみ取った。
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昨秋の九州大会初戦。江口監督は同点の七回1死二塁で、前の投手が打者に2球投げた後、菅井一輝君(3年)をマウンドに向かわせた。菅井君を「考えすぎるタイプ」と見ていたため、その余裕を与えない方が力が出せると信じた。
「びっくりしたけど、落ち着いて投げることができた」という菅井君。その打者を三振に抑えた。
この日は一転、先発したエース西雄大君(同)が点を奪われても、マウンドを任せ続けた。西君も「当初は七回までと言われていたが、『いけるところまで、お前がいけ』と言われた」と、完投勝利で起用に応えた。
西日本短大付(福岡)のコーチとして、1992年夏の全国制覇を経験した江口監督。普段から「私生活がプレーに出る」と繰り返す。学業でも、実力が成績に反映できていないとみると、個別に声をかける。
弥富紘介君(同)は進路の面談で「体育教諭として野球を教えたい」と相談した。「明るい性格だから、教師に向いている。俺がいなくなったらここで監督をやれ」と背中を押された。「先生みたいな監督になりたい」と弥富君は言う。
江口監督は大会前から、「生徒の力を引き出したい」と繰り返してきた。一方の選手たちは試合前、「まずは初勝利をプレゼントして、最終的には優勝して監督を胴上げしたい」と話し合っていた。大舞台にひるむことなく、持てる力を発揮した選手たち。待望の1勝をあげ、「生徒たちがよくがんばってくれました」。江口監督は試合を振り返った。(木下広大)