衆院沖縄3区補選(4月9日告示、21日投開票)で、与野党候補が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題をめぐって正面から対決する見通しになった。安倍政権が支援する新顔が26日に移設を「容認」と明言。一方で「オール沖縄」勢力が推す新顔は「反対」を掲げている。
「苦渋の選択だが容認せざるを得ない」。26日、沖縄市で政策を発表した自民公認の元沖縄・北方相、島尻安伊子(あいこ)氏(54)は、辺野古移設についてこう述べた。衆院沖縄3区は名護市を含む。普天間飛行場の危険性の除去のためと訴え、「移設問題への道筋を示し早期解決をする」と強調した。
昨年9月の知事選。安倍政権の全面支援を受けた候補は、移設の是非に一切触れなかった。同様の戦術で勝利した昨年2月の名護市長選にならったが、大敗した。自民県連は「辺野古移設を封印したのは明らかに失敗だった」と総括。「移設容認」を掲げると決めた。陣営幹部は「工事が進み、はっきりした態度で県民の理解を求める方がいいという判断」と説明する。
連立相手の公明は島尻氏の推薦を早々に決めた。だが、県本部は辺野古移設「反対」のままで、支持層がまとまるかは不透明だ。
一方、社民や共産などの政党、保守系政治団体などでつくる「オール沖縄」勢力は、ジャーナリストの屋良朝博(ともひろ)氏(56)を推す。補選は玉城デニー氏が知事に転じたことによるもので、後継として自由党が擁立、無所属で臨む。
地元紙沖縄タイムスの元論説委員で、移設問題については「辺野古の埋め立てが不要な普天間返還プランを策定し実現する」と主張する。陣営幹部は「相手が辺野古容認を打ち出したことで、争点が明確化して戦いやすい」と歓迎する。
玉城知事も全面的に支援に乗り出す予定だ。安倍政権は25日、辺野古沿岸部の新たな区域への土砂投入を始めた。県と政府との法廷闘争も控えており、共に闘う議員を国会に送り出したい考えだ。支援する県議は「補選を落とせば、政権は『地元の民意は辺野古反対ではない』と言いかねない。負けられない」と力を込める。(伊藤和行)