小学生の時からテレビドラマや映画に出演、近年は、舞台を中心に活躍する俳優・鈴木杏さん。現在、再演中の「母と惑星について、および自転する女たちの記録」では、2016年の初演と同じ役を演じています。俳優として、一人の個人として、この役との出会いは新鮮だったと振り返ります。
「10代の中盤から20代後半にかけて、ものすごく長い思春期が終わった――みたいな感じだと思います」。小学生時代のデビューから、二十余年。りんとした瞳に、時折、いたずらっぽい光が踊る。
再演中の舞台「母と惑星について、および自転する女たちの記録」で演じている優は、三人姉妹の次女。母(キムラ緑子)の突然の死から1カ月、姉(田畑智子)と妹(芳根京子)と共に、遺骨を手に向かったトルコで、母の「愛」を巡り、それぞれの記憶と思いがあふれ出す。
3年前の初演、優というキャラクターに出会った時は、不思議な感じがした。一見ひょうきん者の彼女は、奔放な母の支配する一家の緊張を和らげるように振る舞い、道中のトラブルもケラケラと笑い飛ばす。
「それまでは、色々な物をシリアスに背負った役が多くて。自分自身、愁いとか危うさみたいなものが美しいと思っていた時期があったんです。彼女のように明るく柔軟、でも内面には何かを抱えている役柄は、役者としても、わたし個人としても新鮮でした」
毎回、「自分に務まるのか」と…