あらゆるモノとインターネットが結びつく「IoT」の技術を活用し、ベテラン農家がナシの木を剪定(せんてい)するノウハウを蓄積する試験を鳥取大農学部らのグループが公開した。2、3年後に、ナシ園の映像を見ながらどの枝を残すかを示すことができるスマートフォンアプリなどの実用化を目指す。高齢化と担い手不足が進む農業で、特産品・ナシの栽培の技術伝承を図る。
鳥取市福部町湯山の観光農園橋本園(橋本保園主)で27日、鳥取大農学部の森本英嗣准教授(農業情報工学)と学生ら8人が試験を実施した。土木工事現場などで地形を測量する3Dレーザースキャナーを用い、20アール弱のナシ園の26地点で剪定前後のナシの木を撮影した。このデータに実際に剪定した枝の大きさや農家への聞き取りデータを合わせて分析し、剪定のノウハウを見いだす。
ナシの木は、1年で枝が1メートルほど伸びることもあり、毎年収穫が終わった12月ごろから3月ごろにかけて剪定作業をするが、将来的においしい実をつけられそうな元気な枝を見極めて残す必要がある。ただ、枝を選ぶには熟練の技が必要となる。
試験は、森本准教授がスマート田植え機の研究で付き合いのある測量機器メーカーのトプコン(東京都板橋区)に協力を依頼し、2016年11月から始まった。土木や建設の現場でも高齢化が進み、ベテラン職人が減っている。トプコン国内IT農業推進部の吉田剛部長は「農業の方がノウハウを数値化するのがより難しいが、熟練した農家がいなくなる前にデータを残す手伝いをしたい」と話した。(長崎緑子)