塾が教えない中学受験必笑法:1 おおたとしまさ
新中学生の保護者のみなさま、ご入学おめでとうございます。決して楽ではなかった中学受験生活のすえに迎えた春であれば、喜びもひとしおでしょう。
たった12歳にして、不安に打ち勝つために努力を重ね、たったひとりで堂々と入試本番に臨むことができたのだとしたら、それだけで十分に大きな成功体験です。
ただし、同じ教室にいる生徒でも、心の中の色はさまざまなはず。
東大合格者ランキングトップ10常連の某男子校の教員は、中1の最初の授業で「この学校に来られて良かったでしょ?」と生徒たちに問いかけます。大半の子が大きな笑顔で「うん!」と答える一方で、一瞬顔が曇る子もいるのを見逃しません。次に「ほかに行きたい学校があった?」と聞きます。そこは正直な中1男子。「ほんとは俺、○○中学行きたかったんだけどね……」などと本音が飛び出します。そこですかさず先生も「それ言ったら、俺だって△△女学院に行きたかったよ!」と応じ、教室は爆笑の渦。一気にクラスに一体感が生まれます。
一方で、「入学当初から学校に対する不満ばかり言う保護者がいました。第一志望ではなかったのでしょう。親がそうなら子どももそうなる。結局早々に公立中学に転校してしまいました」ともらすのはある女子校の教員です。その学校だって、先進的な教育を積極的に取り入れることで知られる都内では人気の進学校なのに、中学受験の結果への残念感を親自身が消化しきれず、学校への不満にすり替えてしまったのではないでしょうか。そのままの状態で、彼女は転校先で楽しくやっているか、心配です。
第一志望に合格できるのはおよそ3人に1人。それが中学受験の現実です。しかし、人生が勝ち負けでは語れないのと同様に、中学受験から得られるものは、勝ち負けだけでは語れません。
ある男の子は入試本番前から「俺が行けばどんな学校だって楽しくなるよ!」と言っていました。「自分が精いっぱいやった結果ならどんな結果でも潔く受け入れる」というたくましさを、中学受験勉強を通して身に付けたのです。その時点で、彼の中学受験は大成功確定です。いま彼は、第3志望だった学校に堂々と通っています。
中学受験に「必勝法」はありませんが、「必笑法」ならあるのです。