沖縄の海兵隊のグアム移転に伴う米軍の実弾射撃訓練場の整備は、米領グアムのほか、グアム北東の米自治領北マリアナ諸島でも計画されている。地域の先住民チャモロ人には「豊かな自然や先祖から受け継ぐ遺跡が破壊される」として反対の声が強い。チャモロ人は、スペイン、ドイツ、日本に支配され続けた。反対の背景には「外国勢力への抵抗」の側面も垣間見える。
沖縄の海兵隊、なぜグアム移転しない?現地「人手不足」
「多くの島民がここに米軍が必要と言っているのは、移転が経済的な恩恵を与えてくれると思っているからです。でも、私はそれが怖い。移転を推し進めていけば、結局、私たちのもとには何も残らないのではないでしょうか」
3月19日、エメラルドグリーンの海が広がるグアムの海岸。白い砂浜を歩きながら、グアム議会のチャモロ人の議員、サビーナ・ペレスさんがそう強調した。
グアムでは、島北部のアンダーセン空軍基地に実弾射撃訓練場の整備が予定されている。島民の間には移転がもたらす経済効果への期待は強いが、ペレスさんは「実弾射撃訓練で土地の破壊や土壌汚染が進めば、二度と今の自然を取り戻せない」と危機感を抱く。
「私たちは『もはやこの道を続けることはできない』と言うべき局面に来ているのではないか。我々チャモロ人の歴史をみれば、私たちはこの島で3千年以上、米軍なしで生きてきた。私たちは自分たちの内なる自立を取り戻すべき時期にきていると思う」
移転計画では、実弾射撃訓練場は北マリアナ諸島のテニアン島やパガン島でも整備される予定だ。
パガン島は1981年のパガン山噴火で住民が避難し、無人島になった。約320キロ離れたサイパン島に住むチャモロ人のシンタ・カイパットさん(60)は、パガン島について「私は育った土地を決して忘れることはない。そこには私たちの豊かな文化とアイデンティティーがあった」と語った。
「パガン島は最も美しい島だ。島に足を踏み入れれば、精霊とのつながりを感じるだろう。その島を実弾射撃訓練で破壊することを正当化するなんて、想像することすらできない」
グアムと沖縄の間では、「米軍基地建設反対」で市民レベルで連携する動きも出始めている。
グアムの実弾射撃訓練場整備に反対する市民団体「セーブ・リティディアン」の共同設立者モネカ・フローレスさんは、「私たちは今こそ手を携え、互いの抵抗運動を支援し合う時だ」と語る。
フローレスさんは昨年1月、沖縄の市民団体の招きで沖縄を訪問。日本政府が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設工事を進める名護市辺野古の埋め立て工事の現場や、東村高江のヘリパッドの現場を見て回り、反対運動に取り組む地元住民と交流を重ねた。
戦争で多くの命と土地を奪われた沖縄の人々の歴史は、外国に支配され続けたチャモロ人の歴史と重なるという。「沖縄とグアムは似ている。私たちは沖縄の人々と連帯する。これ以上、米軍の占領を我慢すべきではない」(グアム=園田耕司)