静岡県沼津市の沼津港深海水族館がメンダコの孵化(ふか)に成功した。水深200~600メートルにすむ深海性のタコで、生態はよく分かっておらず、孵化に成功したのは東京の葛西臨海水族園に次いで国内2例目という。
飼育員の太田竜平さんによると、昨年9月中旬に地元漁師が駿河湾内の底引き網漁で捕獲し、水族館に提供したメンダコが卵2個を産んだ。水温を深海の環境に合わせて10度に保ち、管理を続けたところ、今月5日朝に体長約1センチの幼生が生まれているのを確認した。4日夜から5日朝の間に孵化したとみられる。
メンダコは短い足が膜に覆われてパラシュートのような姿をしており、離れた両目と耳のように見えるひれがあり、愛らしい。「深海のアイドル」とも呼ばれる。成体は体長20センチほどになるが、生まれたばかりの赤ちゃんも小さいながら、ほぼ同じ姿。一方で成体がオレンジ色なのに対し、赤ちゃんの体は透き通っている。時折、ふわふわと漂うように水中を泳ぐという。
目の前に日本一深い駿河湾が広がる同館は、地元の漁師との連携で状態の良い深海生物が入手できる利点がある。太田さんは「今回の成功を展示の充実につなげていきたい」と意気込んでいる。(岡田和彦)