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握った手がうまく開かない、ペットボトルのふたが開けられない――。手足の筋力が落ちる「筋強直性(きんきょうちょくせい)ジストロフィー」の症状だが、病気のことを知らない人も多い。正しく知って欲しいと、医師や患者会が呼びかける。
妻は体重20キロ 死の危険と「産みたい」、葛藤の先に
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29歳のときに結婚した東京都の男性(39)は、結婚前から妻(39)が買ったばかりのペットボトルのふたを開けられないことに気付いた。そのときは、とくに病院に通うことはしなかった。
大きな異変に気付いたのは長女がおなかにいるときのことだった。胎動がなく、羊水が多かった。2014年春、山梨県内の病院で里帰り出産をした。帝王切開でうまれた長女は正常に呼吸せず、新生児集中治療室に運ばれた。胎盤が癒着していたために出血が多く、出産後の妻の状態も良くなかった。長女は2カ月ほど入院した。
ぬいぐるみと遊ぶ先天性筋強直性ジストロフィーの東京都内の女児(家族提供)
妻のこれまでの様子や出産時の状態もふまえ、DNA検査をした。妻のDNAの検査結果は「筋強直性ジストロフィー」だった。男性は「筋ジス……。壮絶な病気に違いない。どうなっちゃうんだろう」と不安に感じた。そのときに、長女も「先天性」の筋強直性ジストロフィーとわかった。病院からは遺伝性の病気についての説明を受けた。
いま、長女は5歳になった。よく食べて成長している。歩くことはできず、子ども用車いすで移動する。テレビを見ながら「あー」「うー」と言ったり、歌に合わせて手遊びをしたりする。本を読んだり絵を描いたりするのが大好きだという。
男性は「診断を受けたことで、妻がよく寝ることも割り切れるようになった。ただ、妻が出産を機に体が疲れやすく、弱くなった気がする」と話す。妻は3カ月に1度は定期検査を受けて、今のところ大きな体の変化はないものの、食べるときにむせることがあったり、転びやすくなったりしているという。
男性は病名をインターネット検索し、筋強直性ジストロフィー患者会があることを知った。「患者会で、症状が進んだ人の経験を聞いて、参考にしている」。今後を見据えて、家の玄関にスロープをつけて浴室を大きくした。車は福祉車両に買い替える手続きをした。
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