米国で論争が続く人工妊娠中絶をめぐり、反対派が禁止を目指して攻勢に出ている。保守色の強い南部アラバマ州では15日、中絶をほぼ全面的に禁じる州法が成立した。中絶を「女性の権利」と考える擁護派は「違憲」として提訴する構えだ。だが反対派は、保守色を強める連邦最高裁に持ち込んで、人工妊娠中絶を認めた過去の判決をひっくり返すことを狙っている。
米国では1973年の連邦最高裁判決で中絶が認められるようになった。だが、「神が授けた命を奪うのは許されない」と考える保守派は猛反発し、保守色の強い与党・共和党は中絶に反対し、野党・民主党は擁護する政治的な構図が固まっている。
今回成立したアラバマ州法は全米で最も厳しい内容だ。中絶を「妊娠に気づいた後に器具や薬で妊娠を終わらせること」と定義し、母体に危険がある場合を除いて禁止した。妊娠初期段階でも中絶できず、性的暴行や近親相姦(そうかん)で妊娠した場合でも例外を認めない。妊婦は罪に問わないが、中絶手術をした医師は最長99年の禁錮刑となる。
成立から6カ月で施行されるが、最高裁のこれまでの判決と真っ向から対立するため、裁判になれば下級審で差し止めが認められることが確実視されている。ただ、法案を出した女性の州下院議員は「目的は(上級審に控訴して)最高裁判決をひっくり返すこと」と明言する。法案に署名したケイ・アイビー州知事も「最高裁が73年に判決を下した際、私も含め、多くの米国民が同意できなかった」とする声明を出した。
米国では保守色の強い南部や中…