シリア内戦の反体制派が最後の大規模拠点にしている北西部イドリブ県で、アサド政権軍側による医療施設への攻撃が続発している。国連は懸念を表明するが、政権側は市民を狙っていないと否定。改善が見込めないなか、多くの市民が医療を受けられずにいる。
17日夜、イドリブ県南部マーレトヌーマンの病院。帰り支度をしていたムハンマド・フィラス医師(61)は、突然地震のような大きな震動に襲われたと、朝日新聞の電話取材に話した。
アサド政権軍側による空爆だった。通りでは、ラマダン(イスラム教の断食月)の日没後の食事を買いに出ていた人たちが右往左往し、土ぼこりが立ちこめるなかで、親とはぐれた子どもが泣き叫んでいた。
フィラスさんは「あたりに軍事施設はない。病院が狙われたのは明らかだ」と話した。病院は直撃を免れたが、市民5人が死亡したという。
政権軍と支援するロシア軍は、4月末から同県一帯での軍事作戦を本格化している。国連によると、一連の作戦で医療施設への攻撃が20回あり、18施設が破壊された。49施設が全面もしくは一部の閉鎖となり、月平均で17万1千人の診療、2760人の手術、1400人の出産に対応できなくなった。
政権軍はこれまでも、北部アレッポや首都ダマスカス近郊の東グータ地区で、反体制派の支配地域を包囲し、医療施設を攻撃してきた。
フィラスさんによると、地下や山中に洞窟型の施設を建設して医療機能を移すのが最も安全だが、資金不足で、周囲に土囊(どのう)を積むのが精いっぱいだという。
「政権軍は、生活基盤である医…