ちょうど就職氷河期だった。フリーターか、それとも悪徳セールスで稼ぐか。鈴木和樹さん(38)は高校卒業のころ、その二つの道しか見えなかった。
幼い頃、両親が離婚、静岡県に住む祖母に引き取られ、生活保護で暮らした。誰に助けを求めたらいいのか分からず、空腹に耐えた日もあった。高卒後、食べていくため、大手人材会社で日雇い派遣の仕事をした。要領の良さが買われ、正社員にならないかと声がかかる。
派遣労働が急速に拡大する時期と重なっていた。登録スタッフの多くは自分と同様、バブル崩壊後の就職氷河期に社会に出たため、安定した職につけなかった世代「ロストジェネレーション」だ。偽装請負や不当な給与の天引きが横行する。いつも誰かをだましているような日々に心身が限界を迎え、会社を辞めた。
次に働いたのはインターネットカフェ。働く貧困層「ワーキングプア」が問題化した2006年に店長になった。そこで寝起きする人たちの現実を知った。
就職氷河期に社会に出た世代に、「ロストジェネレーション」と名付けたのは、朝日新聞です。40歳前後となったロスジェネは今も不安定雇用や孤立に向き合っています。生き方を模索する姿を伝え、ともに未来を考えます。
【特集ページ】ロスジェネはいま
ある日、常連客だった高齢の男…