1日に公表された東京五輪の聖火リレーの県内ルートは原発事故や津波の被災地をほぼ回り、「復興五輪」を意識したものになった。しかし、双葉町ではいまだ避難指示が全域で続き、解除されても思ったように人が戻っていない地域もある。被災者はルート決定に喜びつつも、復興の光ばかりに注目が集まらないか、複雑な思いを抱える。
東京オリンピック2020
「被災地がどれだけ復興しているかを、全国、全世界に広くアピールできるよう万全の準備を進める」
ルートに決まった楢葉町の松本幸英町長は1日、歓迎するコメントを出した。安倍晋三首相は2013年の招致演説で福島第一原発の汚染水について「アンダーコントロール(管理下にある)」と強調。政府は「復興五輪」と位置づけ、聖火リレーの全国のスタート地はJヴィレッジ(楢葉町、広野町)に決まった。
その後、聖火は原発事故で避難区域が設定された県内の12市町村のうち、全町避難が続く双葉町を除く11市町村と、津波被害を受けた沿岸部をくまなく回る。
しかし、現実は厳しい。ルートに選ばれた6市町村には帰還困難区域が残り、避難指示が解除された地域の多くで、住民帰還は進んでいない。17年春に大部分で解除された富岡町では、町内に住む町民は1010人(5月1日現在)と震災前の1割未満、大熊町では4月に一部地域で解除されたが、ほとんど住民は帰還していない。
大熊町の帰還困難区域から会津若松市に避難を続ける橘秀人さん(69)は「大熊を通ってもらえるのは、少しは復興に近づいているのが分かってもらえ、うれしい」と喜ぶ。一方で「やっぱり人が戻っていないと感じる。現実とPRが大きく違わないようにしてほしい」と注文する。
また、前回の東京五輪マラソン銅メダルの円谷幸吉選手の出身地・須賀川市も選ばれ、橋本克也市長は「ふるさとの地として大変喜ばしく意義深い」との談話を出した。只見川の景観を目当てに海外からの観光客が増えている三島町の矢沢源成町長は「注目が集まることは、自分たちにとって地域を見つめる良い機会になると思う」と語った。(奥村輝、戸松康雄)
■来年3月26日~28日 25…