日本人の老後の蓄えは4年半分しかなく、女性で約20年、男性で約15年分の資産が不足する――。世界経済フォーラム(WEF)が13日、そんな報告書をまとめた。同フォーラムは長寿化や少子化により各国で年金制度が揺らいだとし、資産形成の重要性を呼びかけている。
報告書をまとめたWEF機関投資部門トップのハン・イク氏によると、日本については退職時に65歳で最終的な年収の約2・9年分の蓄えがあるとし、退職前の7割の消費を続けるとして試算した。公的年金などは含まれていない。
米国や豪州など調査対象の他国では年収の5~5・8年分の蓄えがあるといい、資産を投資に回さず預貯金する傾向の強い日本人の蓄えの少なさが目立つ。一方で65歳に達した人の平均寿命が長いため、不足年数が他国に比べて女性で7~9年、男性で5年ほど多くなっているという。
イク氏は「長寿化が進んだが、これだけ長い期間年金を支払うことが制度設計時に想定されていなかった」として、各国で公的年金制度が揺らいでいると指摘。「長期的な視点に立った資産運用が可能になるよう、個人だけでなく、政府や企業が協力して取り組まなければならない」などと述べた。
老後の資産形成をめぐっては、金融庁の審議会が生活費が30年間で約2千万円不足するなどとした報告書をまとめたが、年金に対する不信感の高まりをうけて、麻生太郎金融担当相が報告書の受け取りを拒む事態になっている。(ニューヨーク=鵜飼啓)