若者の車離れが言われて久しい。自動車メーカー各社は若者に受ける車を出そうと四苦八苦しているが、最近、日本では意外な車が若者に受けている。それは米ゼネラル・モーターズ(GM)のスポーツカー「シボレー・カマロ」。ドイツ車が主流の輸入車市場では少数派の「アメ車」だが、若者に熱狂的なファンがいるという。いったい何がその心をつかんでいるのか。
カマロは1960年代に初代モデルが登場し、現行車は2017年発売の6代目。低い車高に広い横幅、力強いボディーラインの「アメ車ならではの個性的なザイン」(GM日本法人)だ。
かつての憧れの存在だった往年のアメ車を思わせるデザインで、当時を知る高めの年齢層に売れるかと思われた。しかし、GM日本法人によれば、18年に売れた約600台を購入者を年代別に見ると、20代が29%でトップ。10代も合わせるとちょうど3割を占めた。輸入車でも、ここまで若い年齢の購入者が多い車種は珍しいという。GMの広報担当者は「当初は50代以上をターゲットにしていただけに驚いた」と話す。
いったいどんな若者が買っているのだろうか。
日本メーカー車では、たとえばホンダで最も若者の購入割合が高い車は10~20代が22%を占める「シビック」だという。価格は280万円からだ。日産自動車では、200万円台のスポーツ用多目的車(SUV)「エクストレイル」が若者に人気だ。
一方、カマロは消費税込み529万円からと高額で、若者が買いやすい値段とはいえない。国内メーカーの広報担当者は「お金に余裕があるかなり特殊な層が買っているだけでは」という。
しかしGMによると、現金での購入は全体の3割ほどで、「ローンを組む購入者が多く、車マニアではないサラリーマンも多い」という。
意外な若者の「カマロ人気」。そのヒントは映画にあった。
07年公開のハリウッド映画「トランスフォーマー」。カマロから変形してロボットになる「バンブルビー」と呼ばれるキャラクターが活躍する。映画の効果で、米国ではカマロに着目する若者が増えたとされ、その流れがに日本にも波及したようだ。
長野県松本市の会社員吉沢茂樹さん(23)は小学生の時に見たトランスフォーマーでカマロを知り、2年前に購入したという。「車好きでなかったのですが、映画で衝撃を受けた。人とかぶらない個性が、日本車にはない魅力。3年間貯金したかいがありました」
モータージャーナリストの石井昌道さんは「趣味的な車は50~60代が主な購入者。ここまで若い人が買う車は珍しい。カマロは昔からアメリカらしさを大切にしていたので、米国車の中でも特にアメリカンな感じが強い。個性を強く打ちだせば、決して安くない車でも若者の購入意欲を引き出せる可能性があるのでは」と話す。
思わぬ人気を獲得したカマロ。とはいえ、販売台数自体は日本の輸入車全体の1%にも満たない。若者からの支持をきっかけに、アメ車が復活ののろしを上げるのか、今後の販売動向に注目だ。(森田岳穂)