ソニーは,同社が製造するCCD撮像素子の一部に不具合があり,このCCDを搭載する製品で「ファインダや液晶表示部に画像が出ない,撮影できない,画面が乱れる」などの症状が現れる可能性があることを明らかにした。
不具合の原因は,CCDチップとリード・フレームをつなぐボンディング・ワイヤの接合が,経年劣化で外れること。同社は,上記の症状が現れた製品について無償で修理を行う。
CCD撮像素子という用途が広い部品の不具合であるだけに,無償修理の対象となる製品は幅広い。PDAからデジタル・スチル・カメラ,デジタル・ビデオ・カメラ,業務用ビデオ・カメラまでが対象になるという。国内モデルでは40機種以上,海外モデルで60機種以上に達する。
同社のCCD撮像素子は他社の製品にも搭載されており,今回の不具合は他社製品にも波及する可能性が高い。ただし「数字は言えないが,不具合が起こる確率はかなり低い」(同社 広報部)とする同社の主張が正しければ,他社は社内基準などに応じてソニーとは異なる顧客対応を取る可能性もある。
生産性を高める活動の中で・・・
不具合の舞台となったのは,ソニー セミコンダクタ九州のあるCCD撮像素子製造ラインだった。そのラインの生産性を高めるために製造工程の改良を進める中で,ワイヤ・ボンディング装置の設定を変更した。この結果,ワイヤと電極の接合力が従来より弱くなったという。
このワイヤの接合面をさらに劣化させたのが,CCD撮像素子のガラスとパッケージを接合するのに用いた接着剤である。一般にCCD撮像素子は,CCDを包む中空構造の樹脂製パッケージの上に,可視光を透過するガラスをかぶせて接合した構造となっている。このガラスとパッケージを接合する接着剤に使っていたヨウ素化合物が気化し,パッケージの中空部からワイヤの接合部に到達,接合面の合金を腐食させたという。パッケージ内に中空構造を持ち,かつガラスの接着が必要なCCD撮像素子ならではの不具合といえる。「ヨウ素化合物の接着剤は,業界では一般に使われている。今回のケースでは,ワイヤと電極の接合部が弱くなっていたため,特に製造バラつきで接合力が十分でなかったワイヤが時間の経過と共に外れてしまった」(ソニー 広報部)。
開発時に行った加速試験や出荷前の検査では,ワイヤの接合面の劣化をみつけられなかった。ワイヤの接合部が弱くなっていた時期は2002年末から2004年初頭で,この間に当該ラインで製造したCCD撮像素子は,同社の製品向けだけで300万個に達するという。
接着剤の変更と接合力の検査で不具合を防ぐ
今回の不具合が最初に見つかったのは2004年6月ころのこと。ソニーは,今に至るまでの不具合の正確な件数を明らかにしていない。同社は報告に基づいて調査を開始,2005年8月末までに原因を突き止めた。不具合が発生する確率が,一部の地域ではソニーの内部基準を超えたことなどから総合的に判断した同社は,代替となるCCD撮像素子の生産体制を整えた上で,今回の発表に踏み切った。
ソニーは同様の不具合を防ぐために,CCD撮像素子の製造工程でヨウ素化合物が入った接着剤の使用を取りやめる。これに加えて同社は,ボンディングの接合力を測定できる検査機械を2004年3月ころから導入しており,この2つの施策によって同じような不具合の再発を防げるとする。 |