テレビ分野における最大の見どころは,実用段階に入った各表示デバイスの「フルHD」(1920×1080画素)対応である。昨年のCEATECでは,フルHD対応の液晶テレビやリアプロが一部登場したが,開発段階のものが多く,展示数も限られていた。それに対し今年は,PDPや液晶,リアプロ,SEDといったさまざまなフルHDのテレビを,一挙に見ることができそうだ。
中でもPDPテレビは,今回のCEATECで初めてフルHD品が出そろう。PDPは,高精細化に当たっての技術的な壁が多く,液晶テレビやリアプロに比べてフルHD化が出遅れていたが,2006年にかけて各社から続々と発売される見込みである。既に松下電器産業は,65インチ型品を2005年11月に発売することを発表している。パイオニアは,より小さい画面寸法である50インチ型品の試作品を今回のCEATECで初めて披露する。同社は2006年春に,フルHDのPDPテレビを発売する予定である。富士通日立プラズマディスプレイのPDPを用いる日立製作所も,フルHD品の試作品を披露するとみられる。
国内のPDPメーカー各社が参画する次世代PDP開発センター(APDC)が初めて構える展示ブースも注目である。発光効率の向上や駆動回路の簡素化などに向けた研究開発の一端を垣間見ることができそうだ。
50インチ型フルHDのSEDも登場か
昨年のCEATECで初めて一般公開されたSEDは,今年も展示ブースが用意されている。今回も,その出来栄えをひと目見ようと黒山の人垣ができそうだ。キヤノンと東芝は,2005年8月から50インチ型台のフルHDパネルの少量生産を始めており,2006年にかけてこのパネルを搭載したテレビを発売する見込みである。今回のCEATECでは,従来の展示と同じく36インチ型品が展示されるのか,発売に向けて少量生産中の50インチ型品が展示されるのか注目したい。
展示方法も注目である。昨年のようにシアター形式の暗い小部屋での展示ではなく,オープン・スペースで展示されれば,明るい場所での見栄えも確認できるからだ。
実用性重視で色を追求する液晶
液晶テレビは,シャープの「AQUOS」やソニーの新ブランド「BRAVIA」など,すぐに手に入るフルHD品が数多く展示されそうだ。見どころは,コストや消費電力などの実用性を考慮しながら,ある程度広い色再現範囲の確保を狙った各社の技術である。例えばシャープは,冷陰極蛍光管(CCFL)に赤色発光ダイオード(LED)を組み合わせた複合バックライトを開発した。色再現範囲はNTSC規格比で95%である。ソニーは,独自開発の蛍光体材料を採用したCCFLを搭載し,色再現範囲をNTSC規格比91%に広げた。いずれも,RGB3色のLEDを用いる手法よりも色再現範囲に劣るものの,従来よりは範囲が広がる。
リアプロは,日本ビクターなどがフルHD品を展示する。前面投射型プロジェクタを含め,プロジェクタではコントラスト比を高めるため,ランプの光量を調整する絞り機構を設ける提案が相次いでいる。映像信号の輝度レベルと同期して絞り量を調節したり,ユーザーが任意に光量を調整したりすることで,黒レベルを引き下げる。今回のCEATECでは,こうした技術の効果を実際に確認できそうだ。 |