北海道上川支庁管内の道立高の校長ら管理職3人が、「指導力不足」と認定した男性教諭(52)に対し、今春以降、生徒や同僚から隔離した部屋で研修を課したうえ、退職を促す発言を繰り返していたことが分かった。教諭は4日、札幌法務局と札幌弁護士会に人権救済の申し立てを行う。道教委は「研修の方法は学校の裁量に任せている」と話しているが、指導力不足教諭の再教育のあり方について議論を呼びそうだ。
教諭は大阪府出身で、38歳で道の教員採用試験に合格し、03年4月に同校に着任。同校は04年9月、指導力が不足しているとして英語担当と1年の副担任を外し、道教委は今年3月、指導力対象制度の対象教員に認定した。
教諭によると、研修は指導力向上と職場復帰を目的に4月から始まった。研修部屋は同校1階の約10畳の書道準備室で、日中でもカーテンは閉じられたまま。外部との接触はほとんどなく、教諭は連日午前7時55分~午後4時40分、デスクで研修日誌を書く。課題は教師の心構えや生徒の指導方法などで、その都度、学校側が与えた。
教頭と事務長はほぼ毎日、研修部屋を訪ねている。教頭らは7月下旬~9月上旬、教諭に「人間のカス。ゴロツキだ」と中傷する発言をしたほか、「最初からやめさせたいとみんな思っている。先生もPTAも」「転職先とか考えているか。不安じゃないか」などの発言を繰り返した。教諭はこれらの発言を録音していた。
教諭は過去に勤務した学校で生徒に体罰を与えたとして処分を受けているが、校長は3月上旬、教諭に対し、「(次に問題を起こせば)懲戒免職だ。依願退職すれば退職金は出る」と述べたという。教諭は「職場復帰を目指してきたのに、どうしてその逆のことをしようとするのか」と憤る。
研修は現在も続いている。管理職3人の発言は不当労働行為の疑いがあるが、この校長は「守秘義務を定めた地方公務員法に基づき、何も話をすることはできない」と言う。道教委教職員課の日下孝主幹は「管理職による中傷や退職強要発言については、何も聞いてはいない」と話している。【武内亮】