【ニューヨーク高橋秀明】ニューヨークシティー・マラソンは6日、当地で行われ、男子は世界記録保持者のポール・テルガト(ケニア)が2時間9分30秒で、女子は、1月の大阪国際女子を制したエレナ・プロコプツカ(ラトビア)が2時間24分41秒で、それぞれ初優勝した。日本勢は、男子の五十嵐範暁(中国電力)の21位が最高。
テルガトは、昨年の覇者ヘンドリク・ラマーラ(南アフリカ)をゴール直前、わずかにかわした。プロコプツカは昨年2位のスーザン・チェプケメイ(ケニア)を終盤、逆転した。
ニューヨークシティー・マラソンは世界最大規模の大会として知られ、一般市民や障害者を含む約3万7000人が参加。この日は、07年2月に「東京マラソン」の開催を目指す東京都の石原慎太郎知事が視察した。
▽男子 (1)ポール・テルガト(ケニア)2時間9分30秒(2)ラマーラ(南アフリカ)2時間9分31秒(3)ケフレジギ(米国)2時間9分56秒
▽女子 (1)エレナ・プロコプツカ(ラトビア)2時間24分41秒(2)チェプケメイ(ケニア)2時間24分55秒(3)ツル(エチオピア)2時間25分21秒
◇テルガト、オリンピックの苦い経験生かす
2時間4分55秒の世界記録を持つテルガトと、南アフリカのラマーラのデットヒートは40キロ付近から始まった。街路樹が黄色く色づいた秋のニューヨークを、2人は並走した。最後はあらかじめスプリント勝負に備えていたテルガトが、わずか0秒32(公式記録上は1秒)の差でフィニッシュ。力尽きたラマーラはゴール直後、倒れこんだ。テルガトの背中が、遠のいていった。
テルガトは序盤、先頭集団の後方に位置し、模様眺め。20キロ付近でようやくトップグループに加わってからも、慎重なレース運びに変わりはなかった。「信じられない暑さだった。厳しいレースだった」とテルガト。レース終盤の正午の気温は17度。体力を温存し、終盤の勝負にかけた作戦が的中した。対するラマーラは最初からトップグループを引っ張ったが、最後の最後で体力を使い果たした。「(最後は)何も覚えていない。2位は悔しい」と、無念の表情だった。
テルガトは96年アトランタ、00年シドニー両五輪は1万メートルで銀メダル。ともにデットヒートの末にきん差の敗北を喫した。「オリンピックのことを思い出した。最後の1秒まで戦った」。オリンピックの苦い経験が、晩年を迎えつつある36歳のテルガトを王者たらしめた。【高橋秀明】
○…女子はプロコプツカが逆転で制した。今年1月の大阪国際女子を制して注目を集めたマラソン界の新星は、40キロ付近でチェプケメイ(ケニア)をとらえ、最後は14秒差をつけてゴール。「途中でだめかと思った」そうだが、37キロ付近でチェプケメイがおう吐しているのを見て、「勝てると思った」という。ラトビア勢としても初制覇。「ラトビアのように小さな国にとって、この勝利はとても大きなもの」と、ビッグレースでの優勝を喜んだ。