【エルサレム樋口直樹】パレスチナのヨルダン川西岸ラマラで12日夜、アッバス自治政府議長の支持母体であるファタハ系の治安部隊が、イスラム原理主義組織ハマス率いる自治政府の首相府などを襲撃、放火した。これに先立ち、ガザ地区ラファでは両派の銃撃戦が発生し、2人が死亡した。イスラエルとの共存を目指す議長がハマスの反対を押し切り住民投票の実施を発表したことで、両派の武力衝突はガザから西岸へ拡大する様相を呈してきた。
ラマラでは、ラファの事件に怒った治安部隊の隊員らにファタハ系武装集団のメンバーらが加わり、ハマスが過半数を占める評議会(国会に相当)庁舎や首相府に押し入った。メンバーらは自動小銃を乱射し、窓ガラスや事務機器を破壊した後、建物の一部に放火した。火は消し止められ、けが人はいない模様。
また、ファタハ系武装集団はラマラのハマス事務所も襲撃し、評議会議員1人を一時拉致した。事態を重く見たアッバス議長は直属の警護隊などを要所に配置し、政府施設やハマス議員の保護に乗り出した。
AP通信によるとラファでの銃撃戦の報復を叫ぶファタハ系治安部隊は「彼ら(ハマス)がガザで仲間1人に手出しすれば、我々は西岸で10人に仕返しする」と警告した。両派の衝突はこれまで、ハマスの本拠地であるガザにほぼ限定されていたが、ファタハが比較的強い西岸にも飛び火した格好だ。
評議会ではこの日、アッバス議長が主導する住民投票の合法性などが協議され、ハマスは議長側との対話が失敗した場合、20日以降の評議会で法的な対抗手段に訴える方針を決めていた。
毎日新聞 2006年6月13日 10時18分