財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が財政再建に向け基本的考え方をまとめた建議(意見書)の全文が14日、明らかになった。地方より国の財政状況が悪化していることを踏まえ、国税の一定割合を地方に配分する地方交付税の法定率(配分比率)を引き下げることを提言。在日米軍再編経費の日本負担分については、予算の聖域扱いとせずに現行の防衛費の枠内で賄うべきだとの考えを示している。
財政審は同日午後、谷垣禎一財務相に建議を提出する。
建議は、「2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化」という政府目標について「一里塚にすぎない」と指摘。国内総生産(GDP)に対する国の債務残高の比率を引き下げるため、「GDP比1.5%以上の黒字確保が必要」と具体的な数値目標を提示した。
そのうえで、地方財政については、バブル期に高い伸びを示した地方単独事業や地方公務員給与などの削減努力を継続するよう要求。国・地方を通じた財政健全化のため「『真に必要な交付税額』を超える額は国民に還元し、国民負担の軽減につなげる必要がある」と強調し、税収増で交付税額が増加する分は法定率を引き下げて圧縮すべきだとの考えを示した。
また、東京都などの大都市が地方都市に比べて法人税収が多いことについて「地方自らが財政調整に取り組むべきだ」と、税収の偏在を解消するシステムを構築する必要性に言及した。
一方、在日米軍再編の経費負担については「中期防衛力整備計画(中期防)の見直しや各年度の予算編成での合理化・効率化」が必要と指摘。装備品の抑制や基地周辺対策、在日米軍の駐留経費負担を抜本的に見直すことで、追加負担が発生しないよう要請している。
社会保障については「必要な給付に対する負担は将来世代に先送りしないよう、安定的な財源を確保する」として、給付拡大の際はそれに見合う増税などの税源確保が不可欠と強調。公共事業は「景気対策ではなく真に必要な社会資本整備として行うべき」とバブル期のばらまきを批判、02年度以降続けてきた事業費削減のペースを「継続すべき」との考えを示している。【古田信二】
毎日新聞 2006年6月14日 11時39分