【上海・飯田和郎】上海で15日開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議は、アフマディネジャド・イラン大統領の言動に国際社会の注目が集まった。オブザーバー参加ながら、核開発問題が浮上して以降、最大の外交舞台。ただ、SCOを足場に米国を揺さぶり続けようとする大統領の手法に、他の参加国は戸惑いも感じている。
14日夜に上海入りした大統領は、正式加盟の6カ国や、他のオブザーバー3カ国の首脳・閣僚と積極的に交流し、友好をアピール。正式加盟国への格上げを訴え、米国のイラン包囲網構築に対抗するパフォーマンスを展開した。
大統領は昨年8月の就任後、イスラム諸国を中心に外遊を続けたが、SCOは別の外交的意味を持つ。国連安保理常任理事国とドイツがイランへの見返り提案でまとまった背景には、SCO中核メンバーの中露が制裁に反対し、協議を通じた事態打開を主張し続けたことが大きく貢献しているからだ。
大統領は提案に明確な態度を示していないが、硬軟織り交ぜた姿勢を取りながら落としどころを探っているとみられ、SCO首脳会議参加で今後の展開を有利にしたいのは明らかだ。16日には外国メディアを集めた記者会見も開き、国際社会へメッセージを発する。
だが、イランの戦術に他の参加国は戸惑いも併せ持つ。SCOが注目されることは、SCOの存在意義向上につながる半面、反テロ・反麻薬や経済協力を共通目標にうたう地域機構に「イラン核問題が持ち込まれる可能性がある」(中国の時事週刊誌「瞭望」)との懸念もある。SCOの未来にマイナス影響を及ぼしかねないとの不安だ。
中国外務省の劉建超報道局長は14日夜、「イラン核問題がテーマに上がることが、首脳会議の成功かどうかを決める要因ではない」と述べ、設立5周年を祝う節目の首脳会議の関心がイラン問題に集中するのを打ち消すのに努めた。
毎日新聞 2006年6月15日 11時50分