インターネットの通信方式を利用したIP(インターネット・プロトコル)電話サービスを行う「近未来通信」(東京都中央区、石井優社長)が東京国税局の税務調査を受け、05年7月までの1年間で、約6億5000万円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。このうち、約1億7000万円は悪質な所得隠しと認定され、追徴税額は重加算税を含め、約2億5000万円に上るという。同社は既に修正申告に応じている。
関係者によると、同社は05年5月と6月の2回に分けて、東京都中央区の機械設備販売会社に対し、IPテレビ電話の市場調査を委託する名目で計3億円を支出した。しかし、約1億7000万円が数回に分けて近未来通信に還流していたという。国税局は、市場調査費用を水増しすることで、法人所得を圧縮していたとみて重加算税の対象としたとみられる。
石井社長は、03年4月までこの機械設備販売会社の社長を務め、現在も取締役に就いており、株式の約半数を所有しているという。
民間信用調査会社などによると、近未来通信は製薬会社に勤務したり、健康器具販売会社を経営していた石井社長が97年に設立し、当初は毛皮や宝石類の販売を手がけていた。その後、国際電話用プリペイドカードの販売やIP電話サービスを行うようになった。
同社は、新聞や雑誌で女優や元プロ野球選手を使ってIP電話の中継局オーナーを募集。同社の資料などによると、オーナーになるには最低でも約1100万円の資金が必要で、毎月の収益試算例が70万~80万円と紹介している。また、女子プロゴルフトーナメントや、野球のマスターズリーグに参加する「札幌アンビシャス」のスポンサーになっている。
同社の公表資料によると、資本金は6540万円で、06年7月期決算の売上高は約245億円で、昨年より約64億円も増加したという。同社は「国税局からの指摘に従って修正申告し、既に全額納付している」と話している。【高島博之】
毎日新聞 2006年8月29日