国や自治体が実施する面接世論調査で、委託業者に回収率目標を課すのをやめる動きが相次いでいる。回収率が低下傾向にある中、無理な目標設定が調査の不正につながり、かえって信頼性を損ねかねないとの判断からだ。内閣府が今年度から、調査が公正に行われたかどうかを監査する仕組みも導入するなど、回収率低下は避けられないとの前提で、精度をどう向上させるかの模索も始めた。
内閣府の世論調査は、昨秋ごろから回収率低下が顕著となり、それまでの7割前後から軒並み5割台に落ち込んだ。昨年4月に完全施行された個人情報保護法の影響などが指摘されているが、軌を一にして、同府や日銀の委託を受けた民間調査員が回収数を水増しする不正が発覚。世論調査の信頼を揺るがした。
回収率の目標廃止はこうした事態を踏まえたもの。内閣府の場合、委託業者選定の入札仕様書に「有効回収率は70%以上を目標とする」と表記してきたが、今年度から削除した。「おおむね70%台半ば」との表現だった日銀も「回収率を指示することで調査がゆがみかねない」(情報サービス局)と、今秋以降取りやめることにした。
東京都や埼玉県なども同じく今年度から、目標を引き下げるといった措置を講じている。
一方、調査の公正性を確保する手段として、内閣府は委託業者が回答者全員に往復はがきを送付し、調査員に不正がなかったかを監査する仕組みを導入。業者にチェックさせ、自らも確認できるようにした。業者への抜き打ち調査も実施する方針だ。
面接世論調査は、オートロック式マンションの増加など生活様式の変化もあり、回収率の回復が望める状況ではない。そもそも「回収率7割」の目標に根拠はなく、統計数理研究所の吉野諒三教授は「もちろん回収率は高い方がいいが、調査環境が変わる中で無理に維持しようとすれば、現場に負担がかかる。(目標廃止は)妥当な判断ではないか」と話している。【渡辺創】
毎日新聞 2006年9月19日