岐阜県庁の裏金問題で、裏金の集約先として開設された県職員組合口座から約1000万円を引き出したとして県に業務上横領容疑で告発された組合元幹部(49)が県やプール資金問題検討委員会の調査に対し、一つ目の口座を解約して裏金を移し替えた二つ目の口座を「選挙資金用に作った」と証言していたことが分かった。県は「別の関係者の話と食い違っており、真偽は不明」としているが、移し替えの目的や金の使途を示唆する証言は他にない。今後、県警の捜査でこの真偽を含めた金の使途の解明が焦点となりそうだ。
元幹部(現総務部課長補佐)が証言したのは、01年4月に開設された「岐阜県職雅(みやび)会」名義の口座。県などの調査では、元幹部は01年4月、99年1月に開設した「岐阜県職員組合中央執行委員長」名義の口座を解約して約1000万円を現金化し、うち500万円をそのまま所持、残る約500万円を「雅会」口座に移し替えた。その後、01年7月と10月にそれぞれ200万円と300万円余を引き出した。
関係者によると、元幹部は調査に対して、当初は口座開設や金の引き出しを否定していたが、その後「『雅会』は選挙資金用の口座だった」「当時の委員長の指示で200万円と300万円余を引き出した。用途は聞かなかったが、選挙資金に使ったのだと思う」と話した。しかし、「選挙」が何を指すかは言わなかったという。当時の委員長は毎日新聞の取材に「元幹部は(裏金の)金庫番だった。自分は口座の存在も知らず、引き出しの指示も現金の受け取りもしていない」と全面否定している。
元幹部の証言は調査の途中で変わるなどあいまいで、県は元幹部が金を私的に流用したとみているが、調査で使途は明確にならないまま。県は「捜査の推移を見守りたい」としている。【中村かさね、秋山信一】
毎日新聞 2006年9月19日