松下電器産業が開発した,デジタル家電用システムLSIの統合プラットフォーム「UniPhier(Universal Platform for High-quality Image-Enhancing Revolution)」。松下電器は,このUniPhierを自社の機器に適用するだけでなく,ASSPなどの形態を含め「積極的に外販していく」(松下電器産業 専務取締役・半導体社 社長の古池 進氏)方針である。具体的な外販の開始時期などは明言を避けた。さらに,同社は「同様の方向性を指向する半導体メーカーを含めて仲間作りをしていきたい」(古池氏)としている。
テレビ受像機,DVDレコーダ,デジタル・カメラ,携帯電話機など,デジタル家電の種類を問わず,ソフトウエアを相互利用することを狙ったUniPhierの核になるのが,新開発したメディア・エンジンである。このメディア・エンジンは,「命令並列プロセッサ」,「データ並列プロセッサ」,「ハードエンジン」と呼ぶ3つの要素から成る。
デジタル家電の機能に応じてマルチメディア処理をスケーラブルに実現するため,松下電器産業は,以下の用途ごとに大きく3種類のメディア・エンジンを用意する。(1)デジタル・テレビやDVDレコーダなど車載/据置型機器,(2)デジタル・カメラやビデオ・カメラなど携帯性が高い機器,(3)携帯電話機である。
(1),(2),(3)を通じて,システム制御などを実行する命令並列プロセッサは共通化する。この命令並列プロセサはマルチメディア処理を意図して設計してあり,C/C++言語で記述したアルゴリズムをコンパイルするだけで利用できる。松下電器は,当面は,命令並列プロセサにおける実行ユニットの数は用途を問わず,3個に固定するという。「さまざまなソフトウエアを調査した結果,実行ユニットを3個にする場合が,最もコストパフォーマンスがいいことが分かった」(説明員)。
命令並列プロセッサをベースとしつつ,ビデオ処理などを担当するデータ並列プロセッサ,およびメディア処理を加速することを狙ったハードエンジンの2種類を拡張回路として規定した。データ並列プロセッサは,演算器の数をスケーラブルにしている。(1)向けのメディア・エンジンが備える演算器の数は(2)よりも多くする。(3)の携帯電話機向けには,データ並列プロセッサを備えない方向である。
ハードエンジンは(1),(2),(3)のそれぞれで異なり,当面は各機器部門が有する設計資産をハードエンジンとして利用することになるという。
このメディア・エンジンにCPUコア,メモリ制御回路,オーディオ/ビジュアル用入出力回路,セキュリティ保護機能付きストリーム用入出力回路などを組み合わせたものがシステムLSIの基本構成となる。
今回デジタル・カメラやビデオ・カメラ向けに試作したチップには,ARM系と松下電器産業が開発した「AM33」の2つのCPUコアを集積した。このチップを使って行ったMPEG-4の復号化などの実演には,OSとしてμITRONベースのものを利用した。携帯電話機を想定した実演にはLinuxを用いた。いずれも,新開発のメディア・エンジンには,別途開発したリアルタイムOSを実装している。 |