イラク戦争時の米軍総司令官トミー・フランクス陸軍大将(2003年7月退役)は「古代中国の軍事思想家、孫子の幽霊が、イラクの砂漠を進む戦車などの周りをうろうろしているよ」と評した。
「孫子の兵法」は世界で現存する最も古く、最も価値のある古典軍事理論の名著として、18世紀以降に欧州諸国へ伝えられた。米国へ「孫子の兵法」が伝わったのは比較的遅く、およそ20世紀に入ってからの1920年代と思われる。だが第二次世界大戦後、米国では「孫子の兵法」がよく運用されてきた。ある人はこう評している。外国において、日本は「孫子の兵法」を高く評価し、米国は「孫子の兵法」をよく運用している、と。
1970年代後半、ウエスト・ポイント米陸軍士官学校は「孫子の兵法」を参考書として教え始めた。「孫子の兵法」は米国の軍事学校や一部の有名大学で徐々に広まっていった。現在、米国で一般に戦略学や軍事学を教える課程の大学、特に軍事学校ではいずれも「孫子の兵法」を必読教材、必修科目としている。
1982年から、米軍は作戦命令や国防総省の重要文書の中で孫子の格言を引用することを一つの不文律としてきた。米軍の新しい「作戦綱要」は、冒頭に孫子の「攻其不備、出敵不意(その備えなきを攻め、敵の不意に出る)」を掲げ、作戦の指導思想としている。
米国のニクソン元大統領は孫子の軍事思想をきわめて尊重した。ニクソン氏は著書「本当の戦争」で何度も「孫子の兵法」の観点を引用して、戦争の策略について研究、分析している。米国の「孫子熱」は政界や軍関係のみならず、民間でも高い。米国の民間では現在、「孫子の兵法」を研究する学会、協会、クラブがすでに100近く存在している。
米国の「孫子の兵法」崇拝者は「アマゾン」ウェブサイト上で「もし人生で一冊しか本を読めないのであれば、その本は『孫子の兵法』であるべきだ」と評している。米国の著名なアジア問題専門家、ジェームス・クラベル氏は1983年に出版された「孫子の兵法」英訳版の冒頭にこう記した。「私はあなた方がこの本を喜んで読んでほしいと心から思う。もちろん、私はこの本を自由世界における将兵、政治活動に携わるあらゆる人々、政府と大学の関係者の必読書になることを望む。もし私が最高総司令官であれば、あるいは大統領や首相などに選ばれたら、私は法律でこのように決めたい。あらゆる軍の士官、特に将校クラスには、毎年2回『孫子の兵法』13編の試験を課すのだ。一回は口頭試問、もう一回は筆記試験。合格点は95点だ。試験で不合格になった将校は直ちに罷免する。上訴を許さない。その他の士官も階級を格下げする」
1990年の湾岸戦争で、米海軍陸戦隊の兵士は「孫子の兵法」を戦場へ持っていった。このことは当時、世界のメディアで大きな関心を集めた。戦争期間中に「ロサンゼルス・タイムズ」の記者がブッシュ元大統領をインタビューした時、元大統領の執務机には2冊の本があったという。一冊は「カエサル伝」、もう一冊は「孫子の兵法」だった。
湾岸戦争以降、米軍は21世紀に向けての新しい作戦方法を絶えず研究し、新しい作戦理論を絶えず世に発表してきた。このうち、米戦略国際問題研究所(CSIS)のハーラン・ウルマン上級研究員の提起した「衝撃と恐怖」理論がある。だが多くの人は「衝撃と恐怖」理論がもともと「孫子の兵法」に由来することを知らない。
イラク戦争で湾岸戦争と同じ敵と戦った米軍は「孫子の兵法」が述べていることをより熟練して運用した。戦争はわずか40日余りで、米軍の大規模な軍事行動は終わった。この戦争を指揮したフランクス司令官はこう評した。「古代中国の軍事思想家、孫子の幽霊が、イラクの砂漠を進む戦車などの周りをうろうろしているよ」(編集ZX)
「人民網日本語版」2004年10月23日