魚が水中で呼吸に使うエラは、肺で呼吸する陸上動物では首にある副甲状腺として残っていることが、ネズミなどと魚の比較研究でわかった。国立遺伝学研究所の岡部正隆助手らが近く米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。動物が海から陸上へ進出した過程の解明に貢献しそうだ。
副甲状腺は筋肉の収縮や神経の情報伝達などに欠かせない血中のカルシウム濃度を感知し、調整する。海水から直接カルシウムを摂取できる魚には副甲状腺がない。
岡部さんらは、ニワトリやネズミの副甲状腺で働く遺伝子「Gcm2」について、硬骨魚のゼブラフィッシュや軟骨魚のトラザメを調べた。すると、この遺伝子がエラで働き、これがないとエラがきちんとできないことが分かった。受精卵から成長する過程では、副甲状腺もエラも同じ部分からできることから、エラが副甲状腺に変化したと結論づけた。
岡部さんは「副甲状腺近くの筋肉で、エラ蓋(ぶた)に相当する部分が、うまく閉じないために生じる人間の赤ちゃんの奇形もある。エラが副甲状腺に変わっていった過程をさらに詳しく調べたい」と話す。 (12/07 16:56) |