「日本人が作った設計仕様書が理解できるくらい優秀なIT技術者を中国で育てる」。ソフトハウスのバンキングシステムズの蓮沼良尚社長(写真)はこう気勢を上げる。日本人が作った設計仕様書が理解できる、というのは蓮沼社長が考える優秀なIT技術者の基準。「日本の仕様書はモデル図など使わず、文章で書かれることが多いため、外国人には難解で理解できないことが多い」(同氏)からだ。
バンキングシステムズは東京が本拠で、社員わずか16人のソフトハウスだが、「安価で優秀なIT技術者を日本のIT市場に送り込む」(蓮沼社長)と意気込む。「中国のIT技術者のスキルは優秀。ただ、日本語でのコミュニケーションができないことや、日本独特の開発の進め方が理解できないといったことがネックになっている。これらの問題を解決すれば、安価で優秀なIT技術者が日本のソフト開発で活躍してくるはずだ」という。
バンキングシステムズは現在、中国福建省にある福州大学中英学院と提携して日本企業向けのIT技術者の育成に取り組んでいる。福州大学中英学院はIT技術者を目指す学生に専門教育を施す学校。2005年1月から、日本語講師を招いて学生に日本語教育をスタートする。
バンキングシステムズはインターシップ制度を導入して、4月から福州大学中英学院の学生5人をインターンシップ留学生として受け入れる。また、バンキングシステムズが請け負うソフト開発の一部を福州大学中英学院の学生に発注する。これらの施策を通して、「中国の学生に日本独特の開発の進め方や開発手法、流行りの開発言語を学んでもらう」(蓮沼社長)のが狙いだ。
蓮沼社長が今回の育成策を思いついたのは2004年になってからだ。きっかけは、オフショア開発に乗り出すべく、中国のIT技術者と面接をしたこと。「欲しいと思える人材はいなかった。技術スキルは高いのだが、日本語でのコミュニケーションが取れない人がほとんどだった」。他の日本ベンダーに聞いてみると、みな同じ問題を悩んでいたという。「優秀なIT技術者を探すのが難しいならば、育てればいい」。こう考えた蓮沼社長は、中国の大学と提携することを考えついた。
すでに、蓮沼社長の考えに賛同して、ソフト開発を委託する企業が出てきた。「将来は、我々が育てたIT技術者が当社のソフト開発だけでなく、日本のユーザー企業やITベンダーのソフト開発など多様な場面で活躍するようになってほしい」と同氏は語る。 |