【ワシントン木村旬】ブッシュ米大統領は15日夜(日本時間16日午前)、ハリケーン「カトリーナ」で大被害が発生したルイジアナ州ニューオーリンズから全米向けのテレビ演説を行い、「史上最大の復興努力になる」と述べ、早期復興に全力を挙げる方針を強調した。また「各都市が自然災害だけでなくテロにも対応できる明確で最新の計画を持たなければならない」と、災害と有事に備えた包括的な国土安全保障計画を検討していることを明らかにした。
ハリケーン被害への対応の遅れに批判が集中し、大統領の支持率が過去最低に落ち込む中、復興に積極的に取り組み、今後の対策にも万全を期す姿勢を国民にアピールすることで支持率のばん回を狙ったとみられる。
大統領は、被災者の迅速な救援▽生活の再建支援▽地域社会の再構築--を柱とした復興計画を明らかにし、「被災者が10月中旬までに避難所生活を終えるのが目標」と約束した。海抜以下の地域が多いニューオーリンズで洪水対策を強化することも表明した。
復興費用は2000億ドル(約22兆円)超の巨額に達するとの試算も出ているが、大統領は「道路や橋、学校などの修復費用の大半を政府が負担し、早急に終える」と財政支出を惜しまない意向を示した。
また、被災者の多くが貧困層や黒人だったことに批判が強まっていることから、被災地を「特別地域」に指定し、黒人らマイノリティー(少数派)も含めた被災者に、税制優遇などによる新たな雇用創出策や事業支援を実施する方針を示した。
さらに、政府の初動対応について「巨大な洪水を起こし、通常の救援システムではうまくいかなかった」と想定を超えた災害だったことを釈明しつつも、「政府の失敗には、大統領の私に責任がある」と改めて自らの責任を認めた。
その上で「政府の対応のすべてを知りたい」と調査を進める方針を強調し、全閣僚に参加するよう指示したことを明らかにした。今後の復興活動では、予算執行をチェックする調査団を設置し、政府に対する信頼回復に努めたい考えを示した。
◇ブッシュ米大統領の演説要旨◇
現在、避難生活を送る50万人以上の人々に、食料や衣服など緊急支援を送るよう指示した。ニューオーリンズのない米国は想像できない。偉大な都市は再び立ち上がる。10月中旬までに避難生活を終えるのが目標だ。
米保健省は1500人の医療専門家をはじめ、50トンにのぼるワクチンや抗生物質、医薬品を現地に送った。被災者による避難先での一時的就労や失業対策も講じている。支援の第一歩を踏み出すため、600億ドル以上の予算を申請、議会に認められた。これは空前の(規模の)危機に対する空前の対応だ。
収入の少ない被災者の生活再建のため、家屋建設の新たな法律制定を議会に提案する。ニューオーリンズの多くは海抜下にあり、その防災をより強固にしなければならない。メキシコ湾岸の復興作業は史上最大規模になる。
自然災害や伝染病、テロなどの発生に備え、国土安全保障省は国内主要都市の緊急対応計画を見直す。私は大統領として政府の失敗に責任がある。政府はカトリーナを教訓とする。議会は(今回の初動対応について)調査を予定しており、私は徹底的な調査に協力する。
毎日新聞 2005年9月16日 11時15分 (最終更新時間 9月16日 14時08分)