1万人削減などのリストラ計画を発表したソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)は23日、毎日新聞などのインタビューに応じ、「ソニーの中にあった部門ごとの壁を取り払うことで、会社が大きく変わる素地を作ることができた」と“復活”への自信を強調した。【聞き手・谷口崇子】
--計画のポイントは?
◆サイロ(縦割り)型の組織の壁を取り払うことに集中した。製品を差別化するためには、会社横断的なソフト開発体制が不可欠だ。ところが、これまでは部門ごとに独自のソフトを作りたいという雰囲気が強すぎた。壁を取り払い、強みであるハード(機器)、コンテンツ(情報の内容)と組み合わせる。それで市場で「勝ち」をつかみたい。
--7月に「日本で(リストラの)大ナタは振るいにくい」と発言したが、1万人(国内4000人)の削減を打ち出しました。
◆米国では「大ナタを振るった」と評価されないだろう。今回はコスト削減よりも、機敏に動くことができる組織作りのためのリストラだ。特に若い技術者の多くが「ソニーを救いたい」と思っているのに、組織的にそれができない状況になっていた。だから、彼らに機会を与えることを重視した。
--03年にも2万人削減などのリストラ計画を打ち出しましたが、失敗しました。今回は成功できるのですか。
◆前回の計画との違いは、カンパニー制の再編と、改革の遂行を途中で検証する仕組みを作ったことだ。前回の計画は、テレビの崩壊的とも言える価格下落で効果が相殺されてしまったのは不幸だった。人員削減で従業員の士気への影響もあった。今回は十分に注意している。
--出井伸之前会長の路線は継続するのですか。
◆出井前会長は、デジタル事業の可能性に関しては先見性があった。縦割り組織を変える目的は、デジタル時代に迅速に動けるようにするためだ。その意味では、出井前会長の夢を私が実現させるということだ。彼の夢はいいものだった。
--本業とは相乗効果が薄そうな金融事業は今後売却するのですか。
◆私は短期的な利益を上げることも求められている。いまソニーで最も利益率のいいのは金融事業だ。私にとって問題があるのは不採算事業で、採算の上がっている金融事業ではない。
--もし、目標が達成できなければ、経営責任はどう取りますか?
◆まず目標達成に向けて努力することが重要だが、できなければ、トップには説明責任が発生する。私の仕事は組織をうまく動かすことだ。はっきりした会社の再生や回復がなく、従業員がソニーにいることに誇りが持てない状況になれば、私はここにとどまることを望まない。