「インターネットと放送の融合」を掲げ、TBSに経営統合を持ちかけた楽天。TBSと業務提携の話をしている最中に、極秘裏に株を大量取得するという強引な手法を用いてまで、なぜTBS統合にこだわったのか。背景を探った。
TBS株の大量取得を公表した13日の記者会見で楽天の三木谷浩史社長は、統合の利点について、「コンテンツ(番組)を充実させれば、広告効率が高まる」と繰り返した。在京民放キー局が持つ番組制作能力が狙いであることを印象づけた。
三木谷社長と交流があるテレビ関連会社の経営者は、三木谷社長の真意について、「ネット業界は急成長を続けてきたが、各社とも広告収入は極めて厳しい。三木谷社長は、現状では成長の限界に近いと感じているはず」と推測する。
ネットでの広告収入を増やすには、魅力ある番組が不可欠。だが、ネット業界に、ドラマやバラエティーなどの番組制作能力は乏しく、「テレビ局の持つ番組制作能力を、のどから手が出るほど欲しがっている」(同経営者)ようだ。
では、なぜTBSなのか。関係者の間では「安定株主の割合が低いから狙いやすかった」との見方が根強い。他の民放は、日本テレビ(読売新聞)、テレビ朝日(朝日新聞)、テレビ東京(日本経済新聞)と新聞社が大株主だが、TBSの場合、安定株主の比率が相対的に低く、多数の株主に分散されている。
敵対的買収者に株式の過半数を握られると、経営権を奪われてしまう。3分の1超でも、重要決定事項への拒否権を握られる。TBSは「安定株主はしっかり確保しており、経営権を奪われる心配はない」と冷静だ。安定株主は4割超とみられるが、敵対的買収者の持ち株比率が20%を超えた時点で、発行済みの新株予約権を株式転換できる買収防衛策を整備していることも冷静さの背景にあるようだ。【望月靖祥】