日本経団連次期会長にキヤノン社長の御手洗冨士夫副会長(70)が就任することが有力になった。御手洗氏は、日本的「終身雇用」と米国が主流の「実力主義」を両立させる独自の雇用理念を築き、実行しながら、企業の高収益も達成した経営者だ。人選に影響力のある奥田碩会長も、新しい時代の経団連会長にふさわしいと判断したようだ。
次期会長選びでは、御手洗氏に並び、トヨタ自動車の張富士夫副会長(68)が有力視されてきた。しかし、現会長を出しているトヨタが2代続けて会長を送らない方針を固め、御手洗氏の起用に傾いた。
会長は副会長(現在15人)から選出されるのが慣例。奥田会長は後任会長の条件として、「国際性」を重要視してきた。キヤノンは生産・開発拠点を世界的に展開し、売り上げの7割を海外が占める。御手洗氏自身も66年設立の販売会社、キヤノンUSAの1期生として赴任して以来、23年間の米国経験がある。これまでの毎日新聞のインタビューでも「グローバル化の広い世界で己を位置づける姿勢が重要」と指摘。豊かな国際感覚は財界内で評価が高い。
徹底的な実力主義を採用するなど、米国での経験をフルに生かす企業経営を続けてきた。昇進には試験を実施し、学歴は問わない。一方で、「社員への教育が蓄積される」として、終身雇用も維持。リストラが風潮となったころも人員削減はせず、「トヨタと同じ、人を大切にする会社」(財界首脳)との評がある。こうした人づくりの理念が、奥田会長が有力候補として推した大きな要因になった。
次期会長は年末までに内定し、来年5月の定時総会で就任する見通し。【須佐美玲子】