インターネット大手「ヤフー」のニュースサイトを装ったホームページに共同通信配信とする虚偽のニュースが掲載されていた件で、問題が報道された19日午後、共同通信とヤフーに「自分がやった」との内容の電話やメールがあった。届け出を受けた警視庁は、著作権法違反や偽計業務妨害容疑などに当たる可能性があるとみて捜査を始めた。【合田月美、木村光則、臺宏士】
ヤフーによると、偽のウェブサイトに報道機関の配信を装った偽記事が掲載されたのは初。目立った混乱はなかったが、ネット社会の危うさを改めて浮き彫りにした。
偽記事は、「【アメリカ18日共同】」として、「アメリカ国防総省は18日未明、中国から日本(沖縄県)に中国軍が侵攻したことを発表した」などとする内容だった。共同通信によると、電話は19日午後、同社の長崎支局に同市内に住む男性(30)からあった。
男性は「9月下旬、ネットの掲示板に同様の偽ニュースを書き込んだが満足できず、ヤフーと酷似したページに書き込むことを思いついた」「18日、ヤフーのページをパソコンに取り込んで改ざんし、ネットに公開した」などと説明。「社会の注目を集めたくてやった。度が過ぎたと反省している」と話したという。共同通信は男性の所在を確認し、事情を聴いたうえで警視庁に通報した。
一方、ヤフーによると同日午後、同社の「お客様センター」に「私がやりました」との名前入りのメールが届き、謝罪の文言もあった。共同通信は「根拠は明らかに出来ないが、ヤフーにメールを送ったのは長崎支局に電話してきた男性だ。男性の話が本当かどうかは分からない」と話している。
◇本物と判別困難
日本インターネット協会によると、本物と同じサイトを作ることは、ホームページを作成する技術があれば比較的容易で、見た目で本物と判別できないものもある。大手企業では、誤った情報がネットで拡散することへの防衛策を講じているところもあるという。
インターネットに詳しい甲南大法科大学院の園田寿教授(情報法、刑法)は「現実にあり得そうな内容の記事が掲載された場合は、本物かどうかを見極めるのは技術的にも難しい。現状ではお手上げなのでは」と話した。