「すごいなあ」。会場入り口で立ち尽くしたサポーターが、しばらく目をゴシゴシとこすっていた。選手の表情や飛び散る汗が見えるほど、ピッチが近い。スタジアム全体をおおう屋根に反響した声援が観客の身を震わせる。
千葉市中央区に16日オープンした球技専用競技場、フクダ電子アリーナ(通称フクアリ)はJリーグ、ジェフ千葉の新本拠地。こけら落としの横浜マ戦は、ほぼ満員の1万7087人と、今季の主催試合で最多の観衆を集めた。
Jリーグ発足当初は2年目の94年に1試合平均2万2262人の観客を集め、屈指の動員力を誇った千葉(当時市原)。しかし、ブームが去った後はジリ貧状態に陥り、98年には同5365人に落ち込んだ。今季も主催試合(リーグ戦)1試合平均は7982人。Jリーグ1部(J1)18チーム中最下位だ。
03年にオシム監督を迎えて以降は、成績も上向いている。にもかかわらず動員が伸び悩む最大の要因とされたのが、ホーム・市原臨海競技場(1万5338人収容)だった。陸上トラックに囲まれたピッチはスタンドから遠く、プレーの迫力を実感しにくい。列車の本数が少ないJR内房線・五井駅から徒歩約30分という立地の悪さも、客足を遠のかせた。利便性の高い専用競技場は、リーグ発足以来クラブ関係者の悲願だった。
新競技場は、千葉市が81億円をかけて建造し、医療機器メーカーのフクダ電子に11年3月までの契約で命名権を売却(06年度は7000万円)。東京からJR京葉線快速で約40分の蘇我駅を降りて徒歩8分。収容人数1万8500人と大きくはないが、クラブ、サポーターの意見を参考に「会場の規模よりも臨場感を」との視点で造られた。横浜マ戦は2-2で引き分けたが、試合後、FW巻は「サポーターと一体になって戦える。重圧に感じるときもあるかもしれないが、今日の試合では元気の源になった」と、心強い味方を得た様子だ。
スタジアムの目新しさで訪れた観客もいただろう。2試合目(22日)は最下位・神戸を相手に4-0と快勝した一方で、観衆は10621人に減り、空席が目についた。選手たちは魅力あるプレーを披露し、観客の心をつなぎとめることができるか。人気を取り戻すためにも「最初が肝心」と話したのはMF阿部。フクアリで行われる今季のリーグ戦残り3試合で、勝利という実績を積み重ねていくしかない。【田内隆弘】