ヤンキースのクラブハウスでは、選手たちが無言のまま、ニューヨークへの帰り支度を始めていた。ホワイトソックスと戦うためにシカゴへ乗り込むつもりだった松井秀も、目標を喪失し、明日から長いオフが始まる。1年目はワールドシリーズ、2年目はア・リーグ優勝決定戦、そして3年目は地区シリーズで敗退。ワールドチャンピオンへの道が遠のいていく3年間だった。
「細かいところがちゃんとできていなかった。それが差として出た」と松井。二回2死一、二塁の守りで、右翼・シェフィールドが右中間への飛球をグラブに収めながら、中堅・クロスビーと交錯して落球し、逆転された。声と目を使っての連携が取れていなかった。
4度の得点機で凡退した松井は「もちろん自分も含めてです」。2点を追う九回2死一、二塁でも一ゴロに倒れ、最後の打者になった。松井は今季、本塁打が202打席出ない不振を経験し、本塁打数は昨年の31本から8本減ったが、打率3割5厘、116打点は自己最高。「3年間、ちゃんとやれたと思う」と、メジャーでプレーした3年間の進化を実感していただけに「よく研究されていた。悔しいです」。拙攻が続いたヤンキースとは対照的に、エンゼルスは三回、そつのない攻撃を見せた。ヒット・エンド・ランで好機を広げ、犠飛と内野ゴロで2点を追加した。
「夢」であるワールドシリーズ制覇は、またしてもかなわなかった。ヤンキースとの3年契約が今年で切れる松井にとって、来季は仕切り直しの年。55番の新たな挑戦が始まる。【高橋秀明】
◇「不完全燃焼です」…
メジャー3年目のヤンキース・松井秀が試合後、今季を振り返った。一問一答は次の通り。
--今の気持ちは。
残念というしかないですね。
--5打席とも走者を置いて回ってきたが。
両サイドを攻められた。インコースの速いボールと、外の緩いボール。一本出ていれば、多少は展開が変わったかもしれない。ちょっと悔しいですね。最後は何とかつなごうと思っていた。
--第4、5戦で9打数無安打に抑えられたが。
しっかり研究されていた。思うようなバッティングができなかった。シーズン中もそうだが、アナハイム(エンゼルス)は本当に細かい攻めをしてくる。コントロールに気をつけていた。
--ワールドチャンピオンへの道は遠いという感じか。
毎年、チャンピオンを目指しているんですけど、なかなか力になりきれなくて、残念です。
--早く終わってしまった分、喪失感は大きいか。
最後(ワールドシリーズ)までプレーするつもりだったので、多少、不完全燃焼です。
--チームには何が足りなかったのか。
野球の細かいところが、ちゃんとできていなかったんでしょうね。そのへんが差として出た。毎年感じていることなんですが、それが目につくようになってきた。
--(ヤンキースとの契約期間である)3年間を振り返ってどうだったか。
慣れてはきたが、その分、相手も自分のことが分かってくる。その中で成績を上げるということは難しい。でも、3年間やってきたことについては悔いはない。負けたことは悔しいですけど。
--来年に向けて何か考えはあるか。
契約のことに関しては、まだ何も考えていない。まだ時間もあるし、ゆっくり考えたい。明日から何もやることがないんで、ひとまず休んで、来年に向けて準備をしていきたい。
--今後も同じチームで戦いたいというよりは、まずはまっさらな気持ちで、ということか。
もちろん、そうです。ここで、ぼく個人としては一区切りつくわけですから。
--夢である世界一を目指すにあたって、ヤンキースが一番近いチームだと今思うか。
それはわからないですね。何とも言えないです。