プロ野球のオーナー会議が4日、札幌市で開かれる。楽天がTBSに経営統合を提案している問題にからみ、東北楽天ゴールデンイーグルスの親会社の楽天が、横浜ベイスターズの親会社のTBSの株を大量取得したことが「野球協約」に抵触するかどうかが大きな焦点。ただ、M&A(企業の合併・買収)が本格化する中、球団と親会社を巡る資本関係の複雑化は楽天に限った話でない。合法的な経済活動と野球協約を両立させるためには、時代にあったルールの明確化が避けられない。【TBS問題取材班】
10月21日のプロ野球実行委員会で、楽天を除く11球団が、楽天のTBS株取得は「協約違反」との認識で一致した。根拠は野球協約第183条。球団の二重支配による八百長などを防ぐため、球団の親会社は別の球団やその親会社の株式を原則として取得できないと規定している。
しかし、フジサンケイグループがヤクルトスワローズと横浜ベイスターズの株を保有するなど、オーナー会議の解釈で協約を弾力的に運用しているのが実情。また、楽天のTBS株取得は本体の経営統合の手段に過ぎず、三木谷浩史社長は政財界関係者に「ベイスターズの売却先を見つけた」と伝えており、二重支配の意図はうかがえない。
企業の株式の持ち合いが支配的だった時代は、資本関係の変動があまりなく、二重支配は問題化しなかった。だが、持ち合い解消が進み、05年の国内のM&A件数が既に年間過去最高を更新する中、株式取得による資本提携は当たり前の経済行為になっている。
球界でも、阪神電気鉄道の筆頭株主である村上世彰(よしあき)氏率いる村上ファンドは、TBS株と西武鉄道株も保有(9月末時点)。西武ライオンズの親会社のコクドと西武鉄道は経営統合する計画で、村上ファンドがライオンズに支配権を持つ可能性がある。その村上ファンドには、オリックス・バファローズの親会社のオリックスが出資している。
ベイスターズ買収に意欲を示すUSENは、既存のテレビ局との株式持ち合いも検討しており、やはり二重支配の可能性が生じる。広島東洋カープの買収を検討しているとされるライブドアにはフジテレビが出資。ライオンズ買収に一時意欲を示し、西武ドーム(埼玉県)の命名権を獲得した通信関連サービスのインボイスには、福岡ソフトバンクホークスの親会社、ソフトバンクが業務提携の一環として約5%を出資するなど、球団の親会社の資本関係は野球協約だけで規制しきれなくなっている。
大和総研の吉川満・資本市場調査本部長は「協約の趣旨は尊重すべきだが、球団保有の意思がない事業目的の株式取得まで規制すべきでない」と指摘。買収後に球団を売却するなどの方針を示している場合は例外にするなど、基準をより明確化すべきだと指摘する。