大阪府岸和田市での放火未遂容疑で逮捕され、大津市の連続放火を認める供述をしているNHK大津放送局記者、笠松裕史(ひろふみ)容疑者(24)=岸和田市磯上町2=が、滋賀県警大津署に初めて任意で事情を聴かれた際、上司など職場への不満を何度も口にしていたことが6日、分かった。滋賀、大阪両府県警の合同捜査本部は、職場環境が放火の動機に影響している可能性が高いとみて、NHKや他の報道関係者から事情を聴く方針。
調べでは、笠松容疑者が供述している大津市の不審火は、4月23日~5月15日の計11件。最初の火事では笠松容疑者が第一発見者として119番通報。その後、何度も現場で目撃された。このうちの8件が集中した5月15日の火事の後、大津署が初めて任意で聴取。その際、笠松容疑者は「行く先でたまたま火事があった」と容疑を否認したが、職場の上司らを動物などに例えるなどして、激しい批判を繰り返したという。笠松容疑者は、今月5日の2度目の事情聴取後、逮捕された。
関係者によると、笠松容疑者は昨年秋ごろから、周辺に職場での悩みを打ち明けるようになった。取材での失敗について、先輩記者から注意を受ける場面を他社の記者がたびたび目撃し、笠松容疑者が友人らに「理不尽だ」と不満を漏らすこともあった。「夜眠れない」と訴え始めた今春には、病院で処方された薬を服用して大津市の県警本部にある記者クラブのソファで眠ったり、腹を抱えて「痛い」とうめく姿が目撃されている。
一方、合同捜査本部は6日、笠松容疑者を非現住建造物等放火未遂容疑で大津地検に送検した。調べに対し、一連の放火について「いずれもライターで火を付けた」と話しているという。【深尾昭寛、蒔田備憲、高橋隆輔】