川の水は、高い所から低い所に流れる。では、平らなはずの海に海流があるのはなぜだろう。
「海面は平らではありません」。海洋情報研究センター(東京都中央区)の鈴木亨・研究開発部長は説明する。
北太平洋では北緯30度から60度付近を吹く偏西風が海水を南へ押している。押す向きが東でなく南なのは、地球の自転の影響で「コリオリ力」という力が働き、海水の流れを右に曲げるからだ。一方、赤道から北緯5度前後には「貿易風」という東風が吹いていて、海水を北に押す。二つの風にはさまれた海水は北太平洋の中央部に集まり、海面を盛り上げる。
盛り上がった水は外側へ流れ出ようとするが、ここでもコリオリ力が働き、流れを右に曲げる。その結果、盛り上がりを中心に右回りの渦ができる。渦に働くコリオリ力と盛り上がりの内側から外側へ働く圧力が釣り合ってバランスがとれる。
この渦が海流だ。高い所から低い所へ向かうのではなく、高い所の周囲を右に回る。台風の風と同じ原理だ。
北太平洋の渦は「亜熱帯循環」と呼ばれ、一部に黒潮を含んでいる。
黒潮は幅100~200キロの海流だ。フィリピン付近から北上し本州の南側を秒速1~2メートルで東へ流れた後、「北太平洋海流」などと名前を変えて米国西岸に達する。そこで南下し赤道の北側を西に流れてフィリピン付近へ戻る。
南太平洋や南北大西洋にも同様の海流の渦がある。風の影響以外にも、周囲より温かい海水があると体積の膨張で盛り上がるため、右回りの海流ができる。冷たい海水の周囲には左回りができるという。【高木昭午】