急性骨髄性白血病のため38歳で亡くなった歌手、本田美奈子さんの葬儀が9日、埼玉県の朝霞市斎場で営まれた。前日の通夜を上回る計約3700人の参列者とファンが集まる中、喪主を務めた母美枝子さん(62)は「どうか美奈子を忘れないで」とあいさつ。その場で泣き崩れた。また、恩師の作詞家・岩谷時子さん(89)は療養先で別れの言葉を贈った。
あまりに早すぎる死に“2人の母”は深い悲しみに暮れた。
正午、雲ひとつない青空の下での出棺。育ての親の高杉敬二エグゼクティブプロデューサーらが体重37キロの本田さんの重みをしっかりと受け止めながら、迎えの車にゆっくりと棺を納めた。
参列者約700人。会場から離れた沿道まで埋めたファンは約3000人。両手で位牌を抱いた母の美枝子さんは「こんなに大勢の方に愛されていたなんて、美奈子は本当に幸せです」とあいさつ。「どうか美奈子を忘れないで。皆さんの心の中にずっとずっと留めておいてください」と願うように言うと、ハンカチで目頭を押さえ泣き崩れそうに。支える高杉氏の腕で大粒の涙をこぼした。
のど自慢大会に挑戦するなど歌手になることが夢だった美枝子さんにとって、自分の夢をかなえてくれた自慢の娘だった。
新人賞を獲得した時には壇上に駆けつけ涙を流す娘をその胸に抱いた。20年間の歌手活動の中で一番の理解者だった。
また葬儀では、足を傷めてリハビリ中の岩谷さんの「いつも真っすぐに生きていた、私の大好きな美術家。いつも娘のように思っていました」との弔文が代読された。
ミュージカルに挑戦した当初から才能を絶賛し、復帰作も話し合っていた恩師だけに「すてきな天使に囲まれ、お歌を歌って」と別れの言葉を贈った。
岩谷さんと作った「アメイジング・グレイス」の本田さんの澄んだ歌が流れる中、響き渡る悲しみのサイレン。妹の律子さん(34)はこぼれる涙もぬぐわずに遺影を抱きしめ、棺を乗せた車が会場を出ると、「ありがとう!」と涙声で叫ぶ大勢のファンが手を伸ばし、すがるように駆け寄った。
遺体は、午後1時、埼玉県・戸田火葬場でだびに付された。