国土交通省は15日、JR西日本に対し「事故後にまとめた安全性向上計画の実行がいまだ不十分」として、一層の取り組みを求めて、鉄道局長名の文書勧告をした。今年4月の尼崎脱線事故から半年余り。同省は大阪や神戸、京都3支社や本社への保安監査で、安全設備に関する検査書類の不備▽本社と支社など現場間での連絡書類の欠落--などを指摘した。同社には現場から約1万件の提案が出ており、同省は担当部の責任を明確にしたアクションプランの作成を指示、今後も監査を続ける。
保安監査は事故後の5月31日に再発防止策としてJR西日本に提出させた安全性向上計画を受け、同省鉄道局と近畿運輸局が実施した。7月から大阪支社など3支社に立ち入り、10月下旬には本社の鉄道本部などの幹部から、安全確保の状況や企業風土の問題点を聴取。職員の意識向上も含め、社内規則や記録をチェックした。
その結果、(1)支社の情報が本社で把握されず、トラブル情報が共有されていない(2)ATS(自動列車停止)装置や分岐器の速度設定の記録や、検査書類の不備(3)策定中のダイヤ改正作業に余裕が少ない(4)安全推進部以外の当事者意識が不十分--などが見つかったという。
勧告は、本社自らが率先して具体的施策を打ち出すよう求めた「風土・価値観の変革に向けた取り組み」、安全推進部が中心となるよう求めた「『事故の芽』等の報告に対する対応法」など7項目からなっている。
ATSを巡っては事故後、京阪神地区で整備を進めている新型ATSの設計ミスが8路線で96カ所見つかった。同省航空・鉄道事故調査委員会が8月末、東西線でのミスを指摘して同社は把握。しかし、脱線事故の翌月、事故のあった福知山線で新設工事中のATSにミスがあったことを現場社員らが気付きながら、同社幹部にまで報告が上がっていないことも判明していた。【武田良敬、長谷川豊】