全国農業協同組合連合会(全農)秋田県本部のコメ横流し事件の背景となった全農子会社「パールライス秋田」の不良債権問題で、県警捜査本部は16日、同社の元営業課長、阿部則雄容疑者(48)=秋田市千秋=が特定業者とのコメ取引を続け不良債権を拡大させたとして、背任容疑で逮捕した。
調べでは、元課長は兵庫県の卸業者からのコメ代金が滞っていたにもかかわらず、債権回収の義務を怠り取引を継続。03年11月11~28日の12回にわたり、精米計192トン(販売価格6048万円)をこの業者に売り渡し、パールライス秋田に損害を与えた疑い。
農水省などの調査では、元課長は03年9月に同社元専務の斎藤誠吾被告(61)=業務上横領罪で起訴=に、この業者との取引をやめるよう指示されたが、無視していたことも判明している。03年度末で同社の不良債権は2億5000万円余に拡大していた。県警は元課長が業者から数千万円のリベートを受け取っていた疑いもあるとみて調べている。
全農秋田県本部の前本部長で同社社長を兼務していた田村隆被告(62)=同罪で起訴=や斎藤被告ら3人は、この不良債権を穴埋めするため、04年3~5月、農家から販売委託された03年産玄米約762トン(時価約2億5300万円相当)を同社に横流ししたとされる。また、県警は他に当時の県本部管理部長ら9人(うち1人は死亡)を業務上横領容疑で秋田地検に書類送検したが、同地検は8人を「従属的な役割だった」として起訴猶予処分、死亡した1人を不起訴処分としている。【馬場直子】